Q: 日によって労働時間に長短のあるパートタイマーが、労働時間の長い日だけに有給休暇を申請してきます。働いてもいないのに長い時間分の有給休暇手当が必要でしょうか。他のパートタイマーから不満が出ています。
A: 通常の賃金を支払う定めのときは、取得した日の所定労働時間分の支払いが必要です。
有給休暇手当を通常の賃金とした場合、取得した日の所定労働時間分の支払いが必要です。例えば、月、木曜日は7時間、他の曜日は4時間、時給1,000円で契約しているパートタイマーがいるとします。このパートタイマーが、月曜日や木曜日に有給休暇を取得すると、有給休暇手当は7,000円になります。他の曜日では、4,000円です。同じ有給休暇を取得しても、曜日によって有給休暇に差が出るのは不合理を思われますが、有給休暇手当を「通常の賃金」と定めたときは、これが正解です。
御社では、このパートタイマーだけが所定労働時間の長い日を狙って有給休暇を取得するために、他のパートタイマーから不満が出ているとのことで不合理な制度となっているようです。このまま今の状態を放置すると、他のパートタイマーも所定労働時間の長い日だけに有給休暇を申請してくることも考えられます。
この改善策として、有給休暇手当を、「通常の賃金」から「当該月の平均日給相当額」に変更することを提案します。この変更は、ある者にとっては不利益を伴いますので会社が一方的に変えることは避けます。まず、現制度の不合理性を従業員に説明し、疑問点に答えた上で、就業規則を変更するようにします。
労働基準法では有給休暇手当の支払い方法は、「通常の賃金」か「平均賃金」と規定されています。平均日給相当額は、平均賃金よりも高額ですので、変更の結果が労働基準法の違反とはなりません。労働基準法に「平均賃金」の規定があるので、この際、有給休暇手当を平均賃金に変更して経費削減を図ろうとの考えが湧くかも知れませんが、これはお勧めできません。有給休暇手当は確実に低下します。労働基準法第1条第2項には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならない」とあります。経費節減に正当な理由がないと、この変更自体が無効となる可能性があります。