過払い金が返ってくるから「弁護士事務所に相談したら」とのテレビコマーシャルが多く流されています。噂では弁護士事務所の次の狙いは「不払い残業代」だと盛んにいわれています。
過払い金とは
金融会社、とくに消費者金融会社は灰色ゾーンの金利、つまり利息制限法に定める上限金利は超えてはいるが出資法に定める上限金利には満たない金利で貸し付けをしていました。これに対し、裁判所が灰色ゾーンを認めない判決を出したことから、利息制限法に定める以上の分は取り返せるとなったのが過払い金問題です。過払い金の返還金で体力を落とし、倒産した金融会社も少なくありません。この過払い金問題で主役を演じたのが弁護士事務所です。過払い金問題はそろそろ終焉を迎えることから、弁護士事務所は次のターゲットを「不払い残業代」問題に定めつつあります。
どこにでもありうる不払い残業問題
マクドナルドの「名ばかり店長」問題がマスコミに報道されたことを発端に不払い残業の問題は一気に浸透しました。また、昨年(平成21年)9月には京都で元横綱若乃花こと花田勝氏の顔で有名なチャンコ料理店に対して、「月給に割増賃金を含んでいるとは認められない」として、残業代約1,500万円と付加金約1,100万円の支払いを命じた判決がありました。この問題を一部外食産業だけの問題と決めつけると大変なことになります。
- 管理職の課長には残業代は不要
- 営業職には残業代を含めた外勤手当を支給
- 社員は自主的に始業30分前には出社して職場内外をきれいに清掃している
これで安心していてはいけません。いつ、弁護士事務所を通じて「不払い残業代を支払え」との訴えが来るか分かりません。訴えられたら、それに反論できますか。もし反論できなければ、負けます。負ければ残業代と悪くするとペナルティとしての付加金を支払う羽目になります。
リスクの低減策を
会社の規模にかかわらず社員に伴うリスクはどこにでもあります。もし問題が発生したら、残業代の支払いで、倒産した金融会社と同じように苦しい経営を余儀なくされるかもしれません。100%リスクをなくすことは無理でも、小さくすることはできます。「わが社にも人事リスクは存在する」との前提の下に、まずは就業規則を作成または見直しすることを強く勧めます。時給の計算方法、割増賃金の発生要件、時間外業務の命令体制、勤務時間の把握方法等のルール化が必要です。地道な作業ではありますが、この作業が強い会社を作り上げます。自社だけで困難なときは是非、社会保険労務士の活用を検討してみてください。
今回は、弁護士事務所が活躍している「過払い金」から、次のターゲットになるであろう「不払い残業代」に言及し、そのリスクと社会保険労務士との連携を紹介しました。