Q: 現場で働いている社員の聴力の低下が進み、近づいてきたフォークリフトに気づかず接触しそうになることが多くなりました。現場から間接部門に配置転換を考えていますが、注意しなくてはいけないことはありますか。
A: 法で禁じる差別に該当してはなりません。
障害者であることを理由とした差別であると判断されると、配置転換が権利の乱用として無効とされることがあります。これは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)」に障害者に対する差別の禁止および合理的配慮の提供義務が規定されているためです。
障害者雇用促進法第35条では、「事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。」と規定し、不当な差別的取扱いを禁止しています。更に第36条で、事業主が適切に対処するために必要な指針(「差別の禁止に関する指針」という。)を定めています。この指針で、障害者であることを理由として、配置や転換の対象を障害者のみとすることや、その対象から障害者を排除すること、その条件を障害者に対してのみ不利なものとすることは、障害者であることを理由とする差別に該当するとしています。
御社のケースは、安全に関わることなので障害者差別に該当する可能性は低いと思われますが、配置転換を検討する前に、合理的な配慮により現業務を遂行する可能性の有無を検討することが求められます。その上で、実現のために会社が過重な負担を強いられるようであれば配置転換を検討することが可能です。そのときも当人に対しては現業務を継続するときの危険性や継続が難しい理由を十分に説明することが必要です。