2015年 3月(第70号)
今年4月から改正パートタイム労働法が施行されます。今回は、改正項目を中心にパート社員を雇用するときに配慮しなければならない事項について考えてみます。
改正の特徴
パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は平成5年に制定された比較的新しい法律です。当初より正社員との均衡のとれた処遇の確保を目指していましたが、今回の改正でその方向性をより強く打ち出している感があります。更に、会社に対するペナルティーを強化していることも特徴の一つです。
労働条件の文書交付、説明義務
パート社員の雇い入れ時には、労働基準法第15条とパートタイム労働法第6条の規定により、給料、労働時間、休日、昇給、賞与、退職金の有無等の労働条件を文書で交付することは既に義務化されています。今回は、それらに加えて後述する相談窓口を文書で明示することが課せられました。更に賃金制度の内容や処遇の改善等について、口頭での説明しなければならなくなりました。説明内容として例えば、①給与制度、②教育訓練、③利用できる福利厚生施設、④正社員への転換制度などが対象になります。パート社員から、給与の決定方法や正社員との格差理由を求められたときは、これに応じることも義務化されました。
相談窓口の整備
パート社員からの苦情を含めた相談の窓口を整備することが義務化されました。社内に相談担当者を指名するか、社長自らが相談担当者となるか、または顧問の社会保険労務士に委託することが考えられます。この窓口を文書で提示することになります。
正社員との均衡
パート社員は時給制で、昇給の仕組みも昇格の仕組みも整備していない、賞与も退職金もなくて当然との考え方は、通じなくなります。「待遇の格差は不合理であってはならない」と原則禁止されました。格差が許されるのは、職務の内容と転勤等の人材活用の仕組みの違いを理由とする場合だけです。これはちょうど平成25年4月に施行された改正労働契約法の「有期契約社員であることを理由に正社員との間の不合理な労働条件の設定の禁止」と同じ趣旨の規定になります。
格差があっても労働基準法の禁止条項と違い罰則規定がある訳ではありません。とは言っても、違反に対して行政から是正勧告を受けることはあります。また、格差による差額補償を裁判所に訴えられたときは、合理的な理由を提示できないと会社は不利な立場におかれることになります。
ペナルティーの強化
従来は、雇い入れ時の雇用条件を文書で示さないことに対し30万円以下の過料が課せられていました。今回、実効性を担保するために行政からの報告の求めに対しての拒否や偽りの報告に対して20万円以下の過料、また行政からの是正勧告に従わなかったときは会社名を公表できるようにペナルティーが強化されました。