7月号 人事評価基準

2021年7月(第146号)

人事評価は会社の存亡に大きく関わっていると言われます。今回は人事評価を原点に立ち戻って評価基準を中心に考えてみます。

人事評価とは

人事評価の定義は人によって種々あります。著者が好んでいるのは、「会社が定めた基準に沿って社員の優劣を評価する」です。この「会社が定めた基準」というところが肝要です。この基準は会社の理念や会社方針に基づいて定められます。つまり、会社の理念や方針に共鳴・共感して、それに合わせた行動・成長する社員を「優秀者」と評価する仕組み、それが人事評価です。
人事評価基準に関した2例を紹介します。

かんぽ生命の営業マンの評価基準

令和1年夏に発覚した、かんぽ生命保険の営業マンが不適切な保険販売を多数行っていた事件は今でも記憶に残っています。この件に対して日本郵政の特別調査委員会の146ページにも及ぶ調査報告書が公表されています。それによると、単に人事評価だけが原因ではありませんが、次のような記述は興味を引きます。「保険募集人の人事評価は、・・・・新契約保険料額ベースによる本人の営業目標を達成した場合に高い業績評価を受けることとされている。」、「不適正募集を発生させた保険募集人を人事評価上マイナス査定の対象とする上記の基準が適用される場面は実際上限定的」。つまり、営業マンは新契約保険料額が多ければ多少の不正をしても「優秀者」と評価され優遇されていました。その結果は、ご存じのような著しい信用失墜です。

積水ハウスの営業マンの評価基準

積水ハウスは直近10年にわたり戸建住宅の販売戸数第1位を続けているハウスメーカーです。同社の営業マンへの評価基準はユニークです。住宅営業と言えば、契約高が評価されるのが大多数と思われますが、積水ハウスでは、「紹介受注こそが理想の営業お手本だ」と紹介受注の多い営業マンが評価される仕組みにしています。
ハウスメーカーはリピーターの期待できない業界です。もし契約高だけが評価基準であれば営業マンは言葉巧みに、ときには強引に契約を成立することに精力を集中し、契約後はその客には一顧だにせずに、新たな客を探して契約成立に向かうことになりかねません。
営業マンは単に契約高を積み重ねただけでは「優秀者」と評価されません。契約後も客の相談や苦情に親身に応じて信頼感を高め、その客から見込み客を紹介されることで評価を受けます。この営業マンへの評価基準が販売戸数第1位の一因になっていることは確かです。

まとめ

人事評価の基準は会社の理念や会社方針に基づいて定められます。そして人事評価の下で社員は良くも悪くも基準に合わせて成長し、企業文化の担い手となります。
これから人事評価を導入しようとする会社、または人事評価の見直しを考えている会社は、次の点に細心の注意を払う必要性を強調したい。

  • 会社理念や会社方針は社長の思いを表しているか
  • 評価基準は会社理念や会社方針に沿って定められているか

人事評価の制度や方法は色々と提唱されています。実際に人事評価を導入・運用するためには制度や方法も検討しなければなりませんが、大事なのは「優秀者」の基準です。基準がしっかりしていれば、多少の語弊はあるかもしれませんが、制度・方法はどうにでもなります。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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