11月号 労災隠しと労災保険

2013年11月号(第54号)

「労災隠しは犯罪です!」とのキャッチフレーズをよく耳にします。ところが、「労災隠し」と「労災保険」の間での混乱や誤解をしているケースが見られます。今回は、労災隠しと労災保険制度について整理してみます。

労災隠しとは

最大の誤解が、業務上の怪我の治療に労災保険を使わないことを「労災隠し」と認識しているケースです。業務上の怪我の治療に健康保険を使うことはできませんが、労災保険を使わなければならない規定はありません。治療費の全額を会社が負担したとしても「労災隠し」にはなりません。
業務上の休業事故があったのに労働基準監督署へ死傷病報告書を提出しなかったり、嘘の報告をしたりすることが「労災隠し」です。これらは、労働安全衛生法第100条違反になります。
労災隠しが発覚すると労働基準監督署は高い確率で悪質な犯罪行為として書類送検し、検察官は起訴をし、裁判所はこれを有罪とします。

労災隠しの理由

労災を隠す理由には、①制度を知らなかった、②元請けに迷惑がかかる、③元請けから仕事がなくなる、④労災保険料が高くなる、⑤労災保険に加入していない、⑥労働基準監督署から指導を受ける、等があるようです。①は論外として、②~⑥が問題です。労災隠しが犯罪視されるのは、再発防止対策が適切にされる機会を奪うためです。

労災による休業とは

被災者が翌日に有給休暇で休んだとしても、休業になるとは限りません。休業とは、療養のために「労働することができない」状態を言うのであって、この状態は医師が判断します。逆に、休業しなければならない状態なのに、無理をして出社させることは、大きな問題になります。

労災保険を使うと保険料は高くなるか

自動車保険からの類推から、労災保険を使うと保険料が必ず高くなるとの思いがあります。ところが実際に保険料が高くなるのは、「メリット制」が適用される一定規模以上の事業者だけです。20名未満の中小の会社は、建設、林業は別としてメリット制が適用されませんので、労災保険を使ったとしても保険料は高くはなりません。

労災保険は誰のため

当然に被災社員のためです。と、同時に会社のためのものです。
労災保険では治療費の社員負担はゼロですので安心して治療を受けることができます。休業による給料の不払い分も通常の80%ぐらいが補償されます。このように、労災保険は被災した社員のためのものです。
一方、労働基準法は会社に対して療養費の全額、休業補償として平均賃金の60%を支払うよう規定しています。高額の治療であったり、休業が長期間続いたりすると、会社の負担は大変な額になります。この負担に耐えることができない会社は倒産します。労災保険は、この負担分の大半をカバーしてくれます。労災保険は会社のためにあるとも言える訳です。

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