12月号 賞与の支給要件

2019年12月(第127号)

今年、アルバイトへの賞与不支給を違法とする判決がありました。今回は、非正規社員も含めて賞与の支給要件について考えてみます。

賞与支給の性格 

賞与は通常の給与と異なり雇用契約により当然に支給が義務付けられるものではありません。賞与は会社の考えで支給を決めるもので、次の3つ性格が含まれていると言われています。
①賃金の後払い
②将来への動機付け
③成果の配分
この性格の軽重を基に、会社は支給要件や支給額の決定をすることになります。

賞与の支給要件例と問題点 

次によく用いられている支給要件とその問題点について説明します。
(1)在籍要件:支給日に在籍していることを要件にしているものです。賞与の性格が将来への動機付け側面が大きいときには合理的な要件といえます。しかしながら裁判所は「公序良俗に違反するとまでは言えない」と消極的な肯定判断をしています。将来的には問題を残した支給要件と言えます。
(2)正社員要件:正社員や正職員には賞与を支給するが、準社員、パートタイマーやアルバイトには支給しないとするものです。従来、多くの会社で長期雇用を前提に中核社員への成長と貢献を期待して、賞与支給に正社員要件がありました。ところが、社会には同一労働同一賃金の流れがあり、冒頭に示した大阪高等裁判所でのアルバイトへの賞与不支給を違法とする判決がでました。裁判内容の詳細は紙幅の関係で省略しますが、パートタイマーには正社員の約8割を支給していましたが、アルバイトには不支給としたことを裁判所は「不合理」と判じました。雇用形態の違いだけで不支給とすることは不合理となる可能性が高いと言えます。
(3)出勤率要件:算定期間中の出勤率を例えば「80%以上」としているものです。欠勤を減らす動機付けの支給要件ですが、出勤率計算に参入する項目を間違えると、公序良俗に反することになります。年次有給休暇、産前産後休業、育児介護休業、業務上の疾病による欠勤、会社都合の休業を欠勤扱いすることは問題です。これらの日を出勤とみなす、または計算式の分母の所定労働日から控除するような取り扱いが求められます。
(4)不懲戒要件:算定期間に懲戒処分を受けた社員には賞与を不支給とする要件です。企業秩序の維持の動機付けに一見合理的な要件と思われます。しかし、この不支給が懲戒処分の一部とみなされると労働基準法第91条の制裁の制限違反となり、不支給は有効になりません。

まとめ 

賞与の性格には様々な要素がありますが、会社としては社員のより良い働きを期待して支給していることでしょう。その賞与が社員とのトラブルの種になってしまっては、何のための賞与かわかりません。
2020年4月からはパートタイム・有期雇用労働法が施行(中小企業への施行は1年後)され、正社員とパートタイマーや有期雇用労働者との間で基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。この機会に、賞与の支給要件を含めてパートタイマーや有期雇用労働者への会社ルールを今一度見直すことをお勧めします。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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