2020年 3月(第130号)
パートタイム・有期雇用労働法が4月から施行されます。この法では待遇差を解消するために「均等待遇」と「均衡待遇」が求められていることはご承知の通りです。今回は均等待遇、均衡待遇を満たすためのツールの一つ、職務評価法を紹介します。
職務評価の背景
ILO(国際労働機関)は男女間の待遇格差を解決するために1951年に同一報酬条約を採択し、日本は1967年(昭和42年)にこれを批准しました。この条約の中で、同一価値労働に対しては性別による区別なしに同一の給与を支払うことを求めています。
パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパート社員や有期契約社員の区別なしに同一価値労働に対して同一給与等の待遇、すなわち均等待遇、均衡待遇を求めています。
均衡待遇とは、仕事が異なっているときに、違いに応じた待遇を求めるものです。つまり違いがあることを前提に、その違いが不合理であってはならないとの規定です。不合理な取り扱いを防ぐために給与に関しては職務に対する客観的な評価が必要で、それが職務評価です。
職務評価の手法
職務評価には簡便な方法からより精緻な方法までいくつかの方法が提唱されています。その中で均等待遇、均衡待遇を実現するための手法としては「要素別点数法」が最も適していると考えられます。ここでは、厚生労働省のマニュアルに沿って、この手法を紹介します。
要素別点数法
職務の大きさを構成要素ごとに評価する方法です。評価結果は点数で表しますので、職務の大きさを点数の総計で表すことができるのが特徴です。構成要素は次の8項目になっています。
①人材代替性:採用や配置転換によって代わりの人材を探すのが難しい仕事
②革新性:現在の方法とは全く異なる新しい方法が求められる仕事
③専門性:仕事を進める上で特殊なスキルや技能が必要な仕事
④裁量性:従業員の裁量に任せる仕事
⑤部門外/社外の対人関係の複雑さ:取引先や顧客、部門外との調整が多い仕事
⑥部門内の対人関係の複雑さ:仕事を進める上で部門内の人材との調整が多い仕事
⑦問題解決の困難度:職務に関する課題を調査・抽出し、解決につなげる仕事
⑧経営への影響度:会社全体への業績に大きく影響する仕事
この8項目ごとに5段階で評価し、項目ごとの重要度に応じたウェイトを掛けて、その総計をその職務の大きさとするものです。文字で読むと難しいように感じられますが、実際に行ってみるとそれほど難しくありません。
職務評価結果の使い方
職務評価結果は点数化されていますので、職務給表等の給与表とリンクさせることが考えられます。ただし、職務評価はあくまでも、社員に課している職務の大きさです。その職務に就いている実際の社員の勤務評価ではありません。従って、社員の勤務評価は別個行い、成績の良い社員に対しては何らかの加算を行う制度とすることが公平性を担保する面から必要になるでしょう。