3月号 労働災害保険の特別加入

2019年 3月(第118号)

社員が業務中に怪我をしたときには労働災害保険の補償がありますが、社長や役員の方が同じような作業中に怪我をしても通常では労働災害保険の適用はありません。ところが、特別加入制度を使うと、労働災害保険が適用されます。今回は、労働災害保険の特別加入制度の概要とその仕組み、認定範囲の違い等を整理してみます。

特別加入の制度とは 

労働災害保険はあくまで労働者を保護する制度です。社長や役員の方は労働者ではなく経営者なので保護する必要がないとの考えの下に通常では労働災害保険の適用外に置かれています。とは言え、中小の会社では社長や役員の方も社員と一緒に現場で汗を流して働くケースがあります。万一事故が起きたときに、社長や役員は経営者だからと全く保護されないのも気の毒なはなしです。特別加入制度は、中小企業で一定の条件を満たした社長や役員が手続きをして労働災害保険に加入できる制度です。

特別加入の仕組み 

労働災害保険は、元来が社員のためのものですから、そのまま社長や役員を加入できるようにはなっていません。加入するためには会社が事務組合という組織に加入し、会社自体が事務組合の1事業所、社長や役員は事務組合に雇われている社員とみなす疑似的な仕組みの下に特別加入を認めています。特別加入するためには次の条件を満たす必要があります。
①中小企業であること
②労働保険関係が成立していること
③事務組合に加入していること
④社長の他、役員を含めて社員以外の事業に従事している者全員を原則として加入させること
社長や役員には給与の概念がありません。そこで、保険料や休業給付額を算定する基礎となる給付基礎日額を3,500~25,000円の範囲で希望して申請します。保険料は、この給付基礎日額を365倍して、それに業種の保険料率を掛けて算出します。

労働災害の認定範囲 

社員は業務に起因した怪我や病気になったときに労働災害の認定を受けますが、社長や役員は経営者であるが故に認定されないケースがあります。例えば、①商工会議所での融資相談中の怪我、②休日や深夜に一人で作業を行っていたときの怪我、③過労死、等の認定は難しいとされています。①と②は経営者としての業務と見なされるためです。③は経営者なら時間管理は当然にすべきだからでしょう。
逆に、被災の原因が例え労働安全衛生法等の法令違反であったとしても、違反事実があるだけで認定申請を却下することにはならないようです。

補償内容 

社員の補償とほぼ同じ内容で通勤災害を含めて次の補償があります。
①療養(補償)給付、②休業(補償)給付、③障害(補償)給付、④遺族(補償)給付、⑤葬祭料・葬祭料、⑥傷病(補償)年金、⑦介護(補償)給付
社員の安全を確保することは、経営者に課せられた義務ですが、自分の身も当然に守らなければなりません。不慮の事故に備えての労働災害保険の特別加入は検討に値するものと言えます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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