5月号 雇用調整助成金の特例

2020年 5月(第132号)

この助成金は本来、不景気や産業構造の変化により業績が上がらず一時的な休業や教育訓練または出向により社員の雇用継続を図った会社に休業手当や賃金の一部を助成するものです。国は緊急に新型コロナウイルスの影響で事業の縮小を余儀なくされた会社はもとより、感染防止策として社員を自宅待機させた会社にも特例を設ける策を採りました。今回は、特例の特徴的なポイントを取り上げて紹介します。

主な特例 

  1. 計画書の事後提出:感染の急激な拡大のために計画書を作成する時間的余裕もなく休業の入った会社も多々あります。そこで6月30日までは計画書の事後提出が可能になりました。計画書は給与の算定期間ごとに提出することが原則ですが、2回目以降の提出は不要になりました。また計画書には通常は休業のための労使協定書を添付しますが、労使協定を締結することが困難なときは確約書でよいとしています。
  2. 対象社員:通常は雇用保険に6ヶ月間以上加入している社員だけが対象でしたが、特例では雇用維持を目的に新入社員・内定者、更に雇用保険に加入できない社員も対象にしています。ただし、後者は本助成金ではなく緊急雇用安定助成金の適用で期間も4月1日以降の休業が対象です。教育訓練の加算はありません。
  3. 助成率:通常は中小の会社に対しては休業に対して8割の助成ですが、①解雇、雇止めがない、②社員数が1月24日からの平均社員数の80%以上の2つの条件を満たせば、9割助成されます(今後、更に拡充が予定されています)。ただし、一日の助成額は8,330円が上限ですので、休業手当の額によっては会社の負担が多くなります。
    教育訓練に対する加算も中小の会社では1,200円から2,400円に拡充されています。
  4. 休業規模:通常は休業等の延べ日数が中小の会社では対象社員の所定労働日数の5%以上ですが、これが2.5%以上に緩和されました。
  5. 短時間休業:通常は全社員の1時間以上の休業が助成の対象ですが、①部門毎、②常時配置が必要な者以外、または③同じ勤務シフトの社員一斉、の短時間休業も対象になりました。
  6. 教育訓練:集合して行うことが困難なために形態が緩和され、更に内容も大幅に拡大されました。形態では、自宅等で行う学習形態(インターネット等を用いたe-ラーニングも可)も対象となり、自社の社員を指導員とする教育訓練も認められます。内容では、通常は業務に関連する知識や技術の習得・向上を目的とするものに限定されていましたが、①接遇・マナー研修、パワハラ・セクハラ研修、メンタルヘルス研修などの一定の知識・ノウハウを身につける教育訓練、②初任者研修、③過去に行ったのと同一の教育研修、も対象となりました。

助成額を増やせる教育訓練 

休業に対する助成額は一日1人当たり8,330円が限度です。ところが教育訓練加算の2,400円はこの上限額に含まれません。環境が許せば在宅勤務として通常の給与を支払い、e-ラーニング等での教育訓練はお勧めです。新型コロナウイルス収束後のV字回復を図るために社員の能力を向上させ、さらに助成額を増やすことができます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。