9月号 みなし労働時間制

2014年 9月(第65号)

労働基準法では、善悪は別にして労働時間に基づいて給料を支払います。1日8時間、週40時間を超えて働けば、原則として通常の給料に割増手当ての支払いが規定されています。しかし、会社の外で働いている社員の本当の労働時間は算定できません。

今回は、その様なときの「みなし労働時間制」について整理してみます。

「みなす」とは

辞書によると、「みなす」とは「ある事物と性質の異なるある事物を、一定の法律関係について同一視して、同じ法律効果を生じさせること」、とあります。もともと、性質が異なっているのですから、「異なっているから同じでない」と文句を言っても仕方ない訳です。これを、反証を許さないと言います。例えば、民法では、未成年が結婚すると成人に達したと見做されます。「結婚しているけど18歳で本当は幼い、だから未成年だ」と主張しても、通りません。反証を許さないのです。

みなし労働時間制の種類

労働基準法では、①事業場外労働に対する「みなし」と②裁量労働に対する「みなし」の2種類のみなし制度を規定しています。①は業務の全部または一部を事業場の外で行うために労働時間の算定ができないときに、あらかじめ決めてある時間を労働したとする制度です。②は業務の性質上、仕事の進め方を社員の裁量に任せ、事前に定めた時間を労働時間とする制度です。②は更に専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類がありますが、今回は説明を省略します。

事業場外労働のみなし労働制

労働基準法は戦後まもなくできた法律です。工場内での労働を想定していたために、労働時間と給料とをリンクさせています。長時間働く→生産量が増える→会社の利益が増える→給料が増える、との図式です。

事業場の外で働いている社員の労働時間は算定できないので、給料の計算が出来ません。そこで労働基準法では日々で多少の長短はあっても「何時間働いたことに決めることができる」としました。これが事業場外のみなし制度です。みなし制度の下では、その日は「いつもより長く働いた証拠がある」と主張しても、「残業手当が不足している」とはなりません。反証を許さないからです。

みなし労働時間の決め方

労働時間の決め方は、次の2通りです。①所定労働時間働いたとする、②事業場外での労働時間を労使が協定を結んで決める。①は、事業場内と事業場外を合わせて一日労働時間を所定労働時間とするものです。②は、事業場外の労働時間を決めて、一日の労働時間を、事業場内外の労働時間の合計します。ちなみに、労使協定で決められるのは事業場外の時間だけで、事業場内外をまとめて決める制度はありません。

健全なみなし制度のために

みなし労働時間制の前提は、労働時間が算定不能です。管理者の同行時や管理者から随時指示を受けているときは適用できません。みなし労働時間制だからと、長時間労働を放置してはなりません。みなし時間と実態とが乖離していないことを適時確かめ、社員が納得できる時間に設定することが、制度を健全に適用するポイントです。

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