2018年 6月号(第109号)
会社は自主参加と認識しているのに、社員は労働時間と捉えてトラブルになっているケースがあります。今回は、労働時間と自主参加について整理して見てみました。
労働時間とは
労働基準法による労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。休憩時間は、会社内に居たとしても自由に使える時間ですから、指揮命令下ではなく労働時間とは言えません。それでは、研修や会社行事、グループ活動、始業前の清掃はどうなるか。ケースバイケースで判断されることになります。
研修時間
社員の能力や技能の向上を図るために、研修を実施している会社は多いと思われます。この研修が業務の遂行に直接関係する内容のときは、原則として労働時間になります。社員の将来を見据えての幅広い知識の習得を目的として、形式的には自主参加となっていたとしても、会社が受講を命じたり、参加を人事考課の評価項目に入れたり、受講レポートの提出を課したりすると、労働時間になるでしょう。
全くの自主参加の研修であり、参加するしないに関して完全に社員の自由に任せるためには、人事評価に用いないことはもとより、出欠を採らない等の配慮が必要になります。
会社行事
忘年会や慰安旅行あるいは社内運動会等の会社行事は強制参加が義務付けされていない限り、自主参加として労働時間にはなりません。ところが、不参加者に不利益が課せられるようなときは、話が変わります。例えば、不参加者は積極性や協調性がないとして人事考課で不利な扱いを受けたり、その時間中に業務に関する重要な情報が伝えられたりすると、もはや自主参加とは言えず労働時間となります。
インフォーマルな改善活動
5S活動やTQC活動等の小集団活動をインフォーマルな改善活動として奨励している会社があります。こうした活動は自己啓発を目的とした自主参加活動として労働時間にしていないケースがありますが、問題です。
自主参加活動であっても事業活動に直接寄与する性質があれば原則として労働時間となります。直接寄与しないとしても、会社行事と同じく不参加者に不利益を課したり、課題を本人の希望に関わらず一方的会社が指定したり、あるいは活動の成果を人事考課の評価要素としていれば、当然に労働時間となります。
始業前、終業後の清掃
始業前や終業後に自分の机に雑巾がけしたり、ごみ箱の中身を捨てたりすることはよく行われています。そのような時間は、清掃することを命じていない限り労働時間ではありません。ところが同じ清掃でも、工場現場での機械清掃や店舗のガラス磨き、クリニック等の床掃除となると話が違います。これらの清掃行為は、製造活動やお客さんや患者さんを迎えるにあたっての必要不可欠な作業です。従って、たとえ社員が自主的に清掃をしているとしても、会社が清掃していることを知っていることをもって黙示の業務命令があったとみなされ労働時間となります。