6月号 フリーランス保護新法

2023年 6月(第169号)

令和5年4月28日に、いわゆるフリーランス保護新法が成立しました。今回は、同法の概要を労働法令と対比しながら紹介します。

フリーランス保護新法制定の背景

近年、働き方の価値観が変化したことにより、ワークライフバランスを重視したり、自己実現を図ったりするために、会社に属しないでフリーランスとして働く人が年々増加しています。フリーランスは事業者ですので、原則として労働法令の適用がありません。そのため委託者との間で報酬減額や未払い、不当な契約解除等のトラブルが増えてきました。

従来、業務委託を規制する法律は、①下請法と②独禁禁止法だけでした。下請法で規制される委託者は1,000万円超の資本金・出資金の会社に限定されていました。また独禁法では「優越的地位の濫用」規制はありますが、契約の公正性を具体的に規制する規定はありません。

国は多様な働き方を整備する一環として、会社とフリーランスとのトラブルを防ぐため「取引の適正化」として新法を制定しました。

適用対象

フリーランスとして保護されるのは、①従業員がいない個人、②代表以外に役員も従業員もいない法人です。委託者として規制を受けるのは、①従業員のいる個人、②2人以上の役員や従業員のいる法人です。かなり広範囲に適用される法律です。

規制内容

  • 内容等の事項の明示(第3条)
    業務委託の内容、報酬額、支払期日等を書面等で明示しなければなりません。これは労働基準法の労働条件通知書の交付と対比できます。
  • 報酬の支払期日等(第4条)
    報酬の支払期日は、業務委託の成果物や役務を受領した日から60日以内に定められなければなりません。内容を検査してからの期間ではありません。これは労働基準法の給与の毎月決まった期日に現金で支払うことの規定と対比できますが、新法では支払方法は規定されていません。
  • 妊娠、出産育児、介護への配慮(第13条)
    継続して業務委託をしているときはフリーランスの妊娠、出産・育児又は介護と業務が両立できるよう配慮しなければなりません。これは育児介護休業法と対比できますが、「配慮」とあるだけで現時点では具体的な措置は決められていません。
  • 言動に起因する問題への措置(第14条)
    性的、妊娠・出産に関する言動等により就業環境を害することに対して体制の整備等の措置が義務付けられています。これは男女雇用均等法、労働施策総合推進法によるセクハラ、パワハラ防止規定と対比できます。
  • 解約予告(第16条)
    継続して業務委託をしている契約の解除あるいは契約更新しない場合は、30日前までに予告をしなければなりません。これは労働基準法の解雇予告と対比できます。予告が解約前30日未満でも解雇予告手当に相当する規定はありません。

まとめ

事業にエネルギーを集中するために、本業との関係が薄い業務をフリーランス等に業務委託することは経営改善のための選択肢の一つです。しかし、そのためにトラブルを招いては逆効果です。

保護新法およびガイドラインを参考に、会社と委託先がWin-Winの関係を築くことが業務委託を成功させる鍵になります。

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