6月号 業務委託契約

2022年 6月(第157号)

事業の効率化や経費削減のためにフリーランスと業務委託契約を締結しアウトソーシングする方法があります。今回は業務委託契約が違法とされた例と注意すべき点を紹介します。

丸和運輸機関の例

令和4年5月29日の読売新聞は、春日部労働基準監督署が吉川市に本社のある(株)丸和運輸機関を労働基準法違反で是正勧告していたことを報じました。同社では個人のドライバーと業務委託契約を締結していますが、次の行為が雇用契約にあたると判断したようです。

  1. 配達ルートの指定
  2. 予定外の配達の指示
  3. 業務許諾自由の制限
  4. 制服の着用要求
  5. 事務管理料の徴収。

通信販売の広がりにより、多くの運輸会社がフリーランスに配送を委託している現状で、この是正勧告は大きな影響を与えると思われます。

業務委託契約の種類

民法によると業務委託契約には

  1. 請負契約
  2. 委任契約

の2つの形態があります。請負契約は請仕事の完成に対して報酬の支払いをする契約です。物品の配達や完成品の納入等が該当します。一方、委任契約は期間を定めて作業を依頼し、作業に対して報酬を支払う契約です。士業との顧問契約や医療行為等が該当します。

どちらの契約にしても受注者は契約内容に基づいて業務を行えばよく、雇用契約と違って発注者が指示・命令をすることはできません。

労働者性の判断基準

委託契約と雇用契約を明確に区分できないケースもあります。次のときは「労働者性あり」と判断される要素となります。

  1. 仕事の依頼に対して拒否する自由がない
  2. 業務の内容や遂行方法について具体的な指揮命令を受けている
  3. 勤務場所や勤務時間が指定されている
  4. 本人に代わって他の者が労務を提供することが認められていない。

この中で特に1と2は「労働者性あり」を強く推認させる重要な要素となります。

「労働者性」を補強するものとして、

  1. 使用する機械や器具を会社が用意する
  2. 報酬額が同様の業務に従事している社員と同じまたは安い
  3. 他社の業務への従事を制約している
  4. 報酬に固定給部分または生活保障的な部分がある
  5. 就業規則の服務規律を適用している等があります。

業務委託契約の法的制約

業務委託契約には労働法は適用されませんが、次の法令が適用されることがあります。

  1. 民法:契約解除するときの損害賠償。
  2. 独禁法:報酬の一方的な決定・減額の禁止。成果物の受領拒否や権利の一方的な取り扱いの禁止。
  3. 下請法:下請代金の支払い期限、発注書面の交付や取引記録の保存義務。
  4. 家内労働法:委託条件の文書明示、工賃の支払い、最低工賃、委託状況届等の届け出義務および帳簿の備付け。

まとめ

業務委託契約は事業活動での選択肢の一つです。しかし業務の選択を誤ると、うまく機能しなかったり労務トラブルから更には労働法違反に発展したりします。指揮命令が必要な業務や依頼を拒否されては困る業務は業務委託契約には向きません。労働者性の判断基準を参考にして、会社とフリーランスがWin-Winの関係が築ける業務でのアウトソーシングを活用したいものです。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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