10月号 所持品検査

2017年10月(第101号)

 社員に対して所持品の検査をする必要に迫られることがあります。しかしながらプライバシーや基本的人権に関わることなので、所持品検査は簡単ではありません。今回は、裁判例を基に所持品検査を整理してみます。

認められる条件

所持品検査は憲法第11条が保障する人権への侵害であるとか、第35条の所持品捜索禁止に違反するとか指摘する人がいます。憲法違反の指摘が的を射ているか否かは置くとして、所持品検査が人権やプライバシーの侵害に繋がる恐れがあることは確かです。
裁判所が所持品検査を容認するには、概ね次の4要件を満足したときと言われています。①必要とする合理的な理由:説明できる合理的な理由がある、②妥当な方法:社員が羞恥心や屈辱感を味わうような方法は認められない、③画一的な実施:疑わしいからとの理由だけで特定の者だけを対象とすることは認められない、④就業規則等への根拠の明示:どのような時にどのような方法で所持品検査を実施するかを前もってルール化してあること。

西日本鉄道事件

最高裁判所まで争われた事件です。この会社では、乗務員による乗車賃の不正隠匿が多くあり、この防止のために就業規則に「所持品の検査を求められたときは、これを拒んではならない。」との規定を設けていた。かつ、この所持品には身に着けているもの全てとして、靴の中も対象となると労働組合との間で確認ができていた。ところが、社員Aは「靴は所持品ではないので承諾なしに検査はできない筈だ」と主張し、検査を拒んだ。会社は、それでは検査の実効性がなくなるとしてAを就業規則違反で懲戒解雇処分とした。Aは裁判所に解雇の無効を訴えたが、最高裁判所は解雇を有効とした。

帝国通信工業事件

この会社は通信機の製造販売を業とし、他社の技術盗用の動きに苦慮していた。ある日、会社は材料らしい物を鞄に入れている社員Bを目撃した。そこで守衛に対して退出社員の所持品検査を要請した。守衛はそれ以降に退出する全社員に対して所持品検査を行った。Bは、検査の目的を説明するよう求めたが、守衛は就業規則の規定を主張するだけで、説明をしなかった。そこでBは、所持品検査は憲法第35条に違反すると主張し、検査を拒否した。会社は穏便にすましたいと始末書の提出を求めたが、Bはこれも拒否した。更に会社は、労働組合にBの説得を要請したが不調に終わり、会社の秩序維持が困難になるとして懲戒解雇処分とした。裁判所は、所持品検査の必要性を認めたが、目的を説明しなかった点を重視し、また秩序維持が困難になるとの主張を退け、過酷すぎると懲戒解雇処分を無効とした。

まとめ

全ての会社で所持品検査が必要あるいは有効である訳ではありません。よって、筆者が就業規則を作成するときに、画一的に所持品検査規定を盛り込むことはしません。
もし盛り込むときは、社員に必要性を十分に説明して協力を求め、検査に際しては、人権やプライバシーに配慮した取り扱いが求められます。

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