「著しい労務側面」とは、環境管理のシステム規格ISO(アイソ)14001で使われている「著しい環境側面」から筆者が転用した造語です。ISO14001では、環境管理システムで管理する対象を「環境側面」と呼びます。この環境側面のうち重要なものを「著しい環境側面」として特定し、これをマニュアルの整備、必要な教育、必要記録、定期的な管理状況の評価等により重点管理しようとするものです。
「著しい労務側面」もまさに同じ考えです。会社にとって重要な労務管理上の項目を「著しい労務側面」として特定し、これを重点管理することにより、会社を強くしようとするものです。「著しい労務側面」は、業種や会社の規模、会社風土、経営陣の価値観の違いにより一概には決まりません。一般論として次のような「著しい労務側面」が列挙できます。
- 一般 : 勤怠管理、人事評価、健康管理、法的資格管理
- 建築業 : 安全管理(高所作業、重機取り扱い)、現場近隣への配慮
- 化学製造業 : 安全衛生管理、危険物教育
- 食品製造業 : 衛生管理
- 輸送業 : 交通安全、交通違反防止、荷物の取り扱い
- 銀行・保険業 : 個人情報管理、横領防止
- 小売業 : 服装管理、接客管理、現金管理
- 医療・介護業 : 接客管理、病気の予兆管理、腰痛防止
これらの「著しい労務側面」が特定されたら、そのための目標を定め、必要な対策を採り、定期的に効果を評価し、必要な見直し策をとる、いわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Act)のサイクルで継続的に完全を図っていきます。
筆者は、就業規則は経営管理システムのサブシステムの役割を担うものであるとの立場です。「著しい労務側面」を就業規則に具体的に記載するのもいいでしょう。あるいは、就業規則には、仕組みだけを記載し、具体的な「著しい労務側面」は別の文書に記載してもいいでしょう。いづれにしても、「著しい労務側面」をPDCAのサイクル通じて管理することにより、会社の体質は強固なものになっていきます。