2022年12月(第163号)
令和4年4月より「パワーハラスメント防止措置」が中小企業にも義務化されました。これを受けて会社方針の明確化、相談体制の整備、パワハラに対する適切な対応体制を講じています。
今回は管理職の意識づけのために杜若経営法律事務所パートナー弁護士、向井蘭先生が開発したパワハラチェックリストの一部を紹介します。
パワハラチェックリスト
このチェックリストは管理職が自己点検をして現実を振り返って貰うためのものです。向井先生が使用者側の弁護士として被害者や加害者と面談する中で加害者の傾向を経験値として抽出したものです。1項目でも該当したら即アウトということではありません。しかし半数を超えたら危険ゾーンにいるとして間違いないようです。
リストの内容
- 部下を60分以上連続で指導したことがある
- 部下を立たせたまま指導をすることがよくある
⇒ 部下を指導することは管理職として当然の行動ですが、長時間や立たせたままで行うことは行き過ぎた指導になる危険を孕みます。
- 「◯さんはパワハラよくしますからね」「それパワハラですよ」と冗談を言われたことがある
- 「その指導行き過ぎではないか」「厳しい指導は程々にした方が良いのではないか」と同僚や上司から言われたことがある。
⇒ 上司や同僚はよくよくでなければ、このような声を発しません。このような声を自らの行動を見直すきっかけにすべきです。
- 部下を指導して部下が泣いたことがある
⇒ 部下が指導に感動して、あるいは至らなかったことを反省して涙を流していると思ってはなりません。単に行き過ぎた指導をしているだけです。
- 部下を「お前」と呼んだことがある
⇒ 上司、部下の関係を服従関係と勘違いしている上司によく見られる言動です。
- 部下に対して「給料泥棒」「君は会社にとって不要の存在だ」「役に立たない」等の発言をしたことがある
⇒ 熱心な管理職は経営者の代行として指導を行うために段々とエスカレートして部下を追い詰める言動を取ることが往々にしてあります。やり過ぎです。
- 部下が自分に対して反論や異論を述べたことはほとんどない
⇒ 常に自分が正しいとの思いは危険です。心理的安全性が担保できないので、面と向かって反論や異論を言い出せないだけです。
- 「パワハラ」被害等を主張する若者の考えについては正直理解ができない
- 正直、「パワハラ」等の言葉が無かった昔の時代の方が良かったと思う
⇒ 時代は昭和ではなく令和です。若者に迎合する必要はありませんが、自分の成功体験・価値観の部下への押し付けは避けたいところです。
まとめ
加害者は自分がパワハラを働いているとの意識はありません。会社業績を何とか向上させよう、部下を一人前の社員に育てよう、との正義感の下での行き過ぎた指導・育成が部下を不快にさせたり追い詰めたりしています。その結果、精神に支障を生じた社員やその遺族が会社に損害賠償を請求するケースが増えてきています。
パワハラは金銭リスクもありますが、社員を失ったり、社員の意欲を削いだりすることが会社にとって大きな損失です。経営者はパワハラに対する断固たる会社方針を明確にすると同時に、管理職の意識を向上させることが求められます。