8月号 時間単位の有給休暇制度

2016年8月号(第87号)

有給休暇の取りづらい職場の改善策として、時間単位の有給休暇制度の導入を検討している会社を見受けます。今回は、時間単位の有給休暇の法の規制、メリット、デメリットおよび導入時のポイントを整理してみます。

労働基準法の規定

時間単位の有給休暇は、2010年4月の労働基準法改正により導入が可能となった制度です。休日とは0時から24時までの丸一日を労働から解放された日とする原則があるために、時間単位の有給休暇では休日を与えたことになりません。そこで、時間単位の有給休暇を導入するにあっては、種々の制約を課しています。

制度の導入には、労使協定が必要です。この労使協定では、次の4つの項目を定めます。①時間単位年休の対象労働者の範囲、②時間単位年休の日数、③時間単位年休1日の時間数④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数。

①の対象者は全員でなくてもOKです。時間単位の有給休暇を取られると業務に支障の生じる業務の方は、外すことができます。②の日数は、年5日以内に制限されています。社員の希望が強いからと言って、6日以上を時間有給とすることはできません。前年度に時間有給を使用しなかった分を繰り越すこともできません。③の時間数は1日の所定時間となります。ただし、1時間未満での取得はできませんので、例えば所定労働時間が7.5時間の会社では、切り上げて1日8時間とします。切り下げることはできません。④の取得単位は通常は1時間単位ですが、2時間、4時間と設定することも可能です。これらを労使協定で定めて、就業規則にもその旨を規定します。

メリット、デメリット

メリットの一番は、社員満足度の向上です。ちょっとした用事のときに、丸一日の休みに代えて、時間単位で休みが取れることは便利です。特に、通院している方や、配偶者の都合が悪いときにお子様を保育園に預けなければならない様な方には便利な制度です。求人票に、時間単位の有給休暇制度があることを記載することは、応募者にアピールする材料として有効です。

反面、デメリットとしては、①有給休暇の取得時間管理が煩雑なこと、②業務時間があいまいになることが挙げられます。また、全員を対象としないときは、③不公平感による新たな労務管理上の問題を生じることになります。

導入時のポイント

時間単位の有給休暇制度を導入するにあっては、当然ながら業務への悪影響を見極めなければなりません。悪影響が許容できない職場や業務は、制度の対象から外すことを検討し、社員に説明しなければなりません。

多少の悪影響はあっても、制度の導入に踏み切る際には、労使協定に有効期間を設けておくことをお勧めします。悪影響が予想を超え、制度の維持が困難であることが分かったときに、比較的スムーズに制度を廃止することができます。

有給休暇の取得日数の義務化が検討されている昨今です。時間単位に有給休暇制度に限らず、有給休暇を取り易い職場環境を整えて社員のモチベーションの向上を図ることは、労務管理上極めて大切なことになっています。

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