2015年 2月(第69号)
残業等の割増手当は給与計算で見落とすことが多いものです。今回は、割増手当の発生要因および未払いに対する付加金について考えてみます。
割増手当の発生要件
恒常的にサービス残業を強いている会社は論外として、きちっと時間管理をして、それに対して割増手当を支払っている積りの会社でも、結果的に割増手当が不払いになっているケースがあります。1日の労働時間が8時間を超えたときに原則として割増手当が発生することは多くの会社で認識されています。しかし、①22時から翌朝5時までは深夜割増、②週の労働時間が40時間を超えると時間外割増、③1週間に7日間労働すると休日割増が発生する規定は、認識していない、あるいは給与計算時に見落としているケースが多く見られ、割増手当の不払いとなります。
割増手当の計算方法
時間外割増は1.25倍、深夜割増は0.25倍、休日割増は1.35倍と知っていても、計算の基準を間違えているケースがあります。
月給制や日給月給制のときに基本給の他に、役職手当や資格手当があるときは、原則としてこれらの手当を基本給に加えた額を月平均の所定労働時間で割り、手当の時給相当額を算出します。そして、これに倍数を掛けて割増分を計算します。加えなくても良い手当類として次の7種類が例外的に限定列記されています。①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた給与、⑦一ヶ月を超える期間ごとに支払われる給与。これら以外の手当類を加えないと結果的に割増手当未払いとなります。
給与が時給だけのときは、時給に倍数を掛ければ割増手当を計算できます。しかし、時給の社員にも例外7種類以外の手当があるときは、これらも月給制のときと同じように割増分を計算しなければなりません。
歩合給も例外7種類に入っていないので割増の対象です。歩合給の時給相当分は、歩合給を、その期間の総労働時間で割って算出します。時間外割増は時給相当分の0.25倍になります。
付加金とは
割増手当が不払いとなっていると、社員の不満が高まったり、会社への信頼感が低下したりします。そして、退職と同時に在職中は我慢していた不満が噴出して、残業代支払い請求に至ります。労働基準法で給与の時効は2年間ですので、2年間にわたり遡って請求されると、場合によってはかなりの額になります。
請求に対して誠実に対処すれば良いのですが、それを怠ると労働基準監督署からの行政指導、それにも対処しないと裁判所に持ち込まれ、このときに付加金の請求をされる恐れがあります。付加金は、未払い額と同じ額とされていますので、裁判に負けると最悪のケースで未払い額の倍額の支払い命令を受ける事態に追い込まれます。
このような事態に陥らないためには、基本的に未払い額を発生させないことですが、付加金は労働者が裁判所に訴え出るまでに未払い額を支払えば請求が出来なくなりますので、早めの対処が求められるところです。