損害賠償金は給料から天引きできる?

社員に損害賠償を請求するには、その旨を就業規則に記載しておく必要があります。では、請求した金額を給料から天引きできるのでしょうか。天引きするには、いくつかの問題があります。労働基準法第24条の「賃金の支払」で全額払いが規定されています。天引きできるのは法令に定める場合と労使協定のある場合だけです。損害賠償金というだけで、社員の合意もなしに給料から天引きしたら、違法行為になってしまいます。

社内積立金や昼食代と同じように損害賠償金も労使協定で天引きできるようにしておけば良いと説く人もいますが、筆者は賛成できません。理由は簡単です。労使協定で天引きできるのは、その金額が明確に確定できるもの限定されるからです。社内積立金も昼食代もその金額に疑いの入り込む余地はありません。しかし、損害賠償額は単純には決まりません。双方の合意があって初めて決まります。合意できなければ、裁判所で決めてもらわなければならない性質のものです。労働基準法第16条で、「損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と賠償予定を禁止しているのは、損害賠償額を一方的に決めることの弊害を避けるためなのです。また仮に金額が合意できたとしても、支払い方法の合意がなければ勝手に徴収することはできないのです。とても労使協定で天引きできるようなものではありません。

就業規則には、「損害賠償額は、実際の損害額の範囲内で双方が協議して決める」旨の記載にとどめ、現実に損害賠償をするときに客観的なデータの基づいて話し合って決めるしかないでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。