控除金差額

Q:厚生年金保険料率が9月に改正されましたが、従来の料率で控除していました。今月の給料で遡って差額を控除できるでしょうか。

 

A:控除協定に基づいて控除することができます。

労働基準法では、給料支払いの関して次の5項目を原則としています。

 ① 通貨払いの原則

 ② 全額払いの原則

 ③ 毎月1回以上の原則

 ④ 一定期日払いの原則

 ⑤ 直接払いの原則

今回のケースでは、②の全額払いの原則に抵触することが懸念されます。

このような計算ミスに類することは、無いことに越したことはありませんが、人のすることですので間違いをゼロにすることは至難の業です。そこで、行政でも通達で、「前月分の過払い賃金を翌月分で精算する程度は、賃金それ自体の計算に関するものであるから、法第24条の違反とは認められない(昭23.9.14 基発第1357号)」としています。つまり、翌月までに間違いに気づき、これを調整する程度のことは、違反にはならないと解釈しています。

しかし今回のケースでは、数ヶ月遡っての控除が必要となっています。そうすると、行政通達の範囲を超えてしまいますので、違法となる可能性があります。これを回避するために、社員の代表との「賃金控除に関する協定」に計算ミスによる調整を入れることがよいでしょう。控除協定が締結してあれば事理明白な金額を控除することは認められていますので、厚生年金保険料の改正に依り発生した差額分を控除することは違反とはなりません。

ただし、厚生年金保険料の差額分とは言え、数が月も遡るとかなりの額になります。場合によっては分割で調整する等の配慮は必要です。もともと会社のミスですので、社員に良く説明すると同時に社員の生活に余り影響を与えない方法で控除することをお勧めします。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。