Q: 令和5年10月から健康保険の被扶養者を対象に130万円の壁対策がスタートしました。具体的にどのようなケースが適用になるのでしょうか。
A: 繁忙期に労働時間を延ばしたことにより、収入が一時的に増えて年収130万円を超えたパートタイマー等が適用の対象です。
健康保険の被扶養者として認定される要件の一つが「年収130万円未満」です。年収が130万円を超えても社会保険に加入できないと国民年金保険、国民健康保険に加入しなければならないので、手取りの収入が減少します。そのために、就業時間を調整しなければならず、会社と社員の双方に不都合な現象が発生しているのが現状です。この暫定的な対策が令和5年10月からスタートした「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
この支援対策では、パートタイマー等の年収が130万円を超えても、それが残業等による一時的な増加の場合には、事業主がそれを証明することで被扶養者としての認証が円滑に行われる制度です。
協会けんぽでは、新規雇用時と毎年11月に被扶養者の収入確認を行っています。過去の収入から将来の年収を推測して、これが130万円以上であると被扶養者から外れます。年収130万円未満はあくまで将来の推定年収です。被扶養者が60歳以上のときは180万円に読み替えます。
事業主は、収入確認時に「被扶養者の収入確認に当たっての『一時的な収入変動』に係る事業主の証明書」を、被保険者を雇用している会社を通じて保険者に提出します。この証明書には事業主の事業所関連情報と被扶養者の
① 雇用契約等により被扶養者の想定される年間収入
② 人手不足による労働時間延長等が行われた期間
③ 当該期間の実績給与額
を記載します。
①の雇用契約等により被扶養者の想定される年間収入が130万円を超えるパートタイマーは就業調整をしたとしても、そもそも対象になりません。あくまで一時的な収入増の方が対象です。一時的な収入増ですので証明が有効なのは連続2回までに制限されています。③の給与額には上限がありません。一時的な増加であれば、いくら多くても証明は可能です。
保険者によっては証明書のほかに別途雇用契約書等の添付書類を求める場合がありますが、協会けんぽでは事業主の証明書だけで収入確認をするようです。
(2024年 2月)