8月号 労使協定と代表者選出

2017年8月(第99号)

時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)等を締結するときに従業員代表の選出が適正でないと、労使協定自体が無効となることがあります。今回は、労使協定が無効とされた事例をいくつか紹介します。

労使協定とは

労使協定は、労働者と使用者との間で締結される書面による協定を言います。労使協定を締結することで、労働基準法等で定められた義務の免除や免罰効果を得ることができます。
多くの法律は業種や会社規模に関わらず、ほぼ統一的に規制を設けています。例えば、労働基準法では、1日8時間を超えての労働は禁止され、超えると罰せられます。しかし、法的に定められた労使協定内での労働は認められます。1日8時間を超えることが認められる労使協定としては、36協定や変形時間制に関する労使協定、裁量時間制に関する労使協定等があります。

医療法人一心会事件

都市型高齢者マンションの運営会社に介護ヘルパーとして勤務した元従業員が、給与から控除された金銭の返還を請求した事件。採用面接を受けた際に同マンションへの居住を勧められ、建物賃貸借契約を締結した。会社は、家賃、管理費および食費の計13万円を給与から天引きしていた。
裁判所は、家賃等を給料から相殺することを合意していたとは認め難いこと、また賃金控除の労使協定書はあるものの、従業員代表が適切な手続を経て選出されたのかに疑問が残る、としてこれを無効として控除した額の支払いを命じました。

京彩色中嶋事件

専門業務型裁量労働制の労使協定を締結していた会社が、運用が不適切と訴えられた事件。同制度は、業務を進める手段や時間配分を社員の裁量にまかせ、実際の労働時間に関わらず労使協定で定めた時間を働いたものとみなす制度です。対象の業務は、研究やデザインの考案等の19業務が定められています。
裁判所は、労使協定の労働者代表の選出方法に不備があったとして協定を無効とし、約2,600万円の残業手当の支払いを命じました。

大東建託割増賃金請求事件

時間外勤務手当の規定は適用されないとされた元営業社員が、支払いを求めた事件。会社は、事業場外のみなし制度の労使協定があるとして、残業代を支払っていませんでした。
裁判所は、労働者選出に関する書面が存在せず、選出の日時も定かでないこと、労働者代表とされる社員が入社6年未満にすぎないことから、適正な労働者代表が締結した協定とはいえず無効であるとして、付加給を含めた300万円余の支払いを命じました。

適正な運用のために

例えば36協定を締結して、労働基準監督署に受理されたとしても、監督署は受理しただけで有効性を保証したものではありません。適正な従業員代表の選出は、最も争点になりやすいところです。選出の日時、方法は記録に残し、締結した労使協定は就業規則と同様に社員全員に周知することが求められています。

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