2018年 4月号(第107号)
社員の雇い入れ時には雇用条件を記載した書面 を交付することが労働基準法で規定されています。既に交付している会社さんが多いと思いますが、今回は、確認の意味で雇用条件通知書についてまとめて見てみました。
雇用条件通知書とは
社員を雇うとは、文書を交わすか否かにかかわらず雇用契約を締結することになります。民法では、契約は口頭でも有効とされていますから、例えば「時給〇〇円で、一日7時間働いてね」との会社の提案に対して、「わかりました」と応えることで雇用契約は成立したことになります。民法上はこれだけでも良いのですが、民法の特別法である労働基準法では、これではトラブルになり易いとして、次の項目に関しては、書面の交付を義務付けています。
①労働契約の期間
②就業の場所、従事する業務の内容
③労働時間、残業の有無、休憩時間、休日、休暇に関する事項
④賃金、計算方法、支払い方法、締め切り・支払い時期に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)
口頭で成立した条件を会社が書面にして交付するものが雇用条件通知書です。会社と社員が合意した内容を双方で確認しながら作成した雇用契約書の取り交わしも当然ながら適法になります。
パートタイマー労働法による規定
労働基準法の規定に加え、パートタイマー労働法では次の項目の記載を義務付けています。
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
④相談窓口
パートタイマーは正社員に比べて雇用が不安定になることが多いので、昇給等の有無を明示することを求めています。また、勤務時間が短いが故に会社組織に慣れるまでに時間が掛かるため、あらかじめ決めた相談担当者を雇用条件通知書に記載することを求めています。
雇用契約内容の注意点
後々のトラブルを避けるために、雇用契約内容は詳細に取り決め、これを雇用契約書等に記載すること、また雇用条件に変更があった時も都度変更内容を盛り込んだ書面を交付することが望まれます。
民法では契約自由の原則の基に、双方の合意があれば公序良俗に反しない限りどのような契約も成立します。一方、労働基準法その他では、この原則にいくつかの制限を掛けています。
①賠償額等を予定する契約は禁止:期間途中で辞めたときや事故を起こしたときに違約金額や賠償金額を定めることは禁止されている。
②労働基準法や最低賃金法の基準を下回る契約はその部分が無効、法の基準が適用になる。
③身元保証人の義務期間は、「身元保証人に関する法律」により、最長5年に制限されている(更新は可能)。
無用なトラブルを避けるために、分かり易く記 載することも必要です。特に、有期雇用契約の際は、更新の有無や、更新あるいは雇止めの要件を明記しておくとよいでしょう。