2021年 9月(第148号)
雇用契約に根拠があれば、会社は必要に応じて配置転換を命じることができます。今回は配置転換のメリット、デメリットを紹介し、配置転換が困難な会社の対処法を提案します。
メリット、デメリット
配置転換には、次のメリットがあると言われています。①組織の活性化、②人材育成、③適性の発見、④マンネリ防止、⑤モチベーションの維持。⑥人的交流の促進。反対にデメリットして、①専門性を磨けない、②精神的な負担、③経験・スキルが活かせない、が挙げられています。
大会社では計画的な配置転換を行っているところが多くありますが、中小の会社での配置転換は簡単ではありません。しかしながら、同一社員が長期にわたって同じ業務に携わっていることの弊害を認識しなければなりません。
配置転換がないときの弊害
メリットの裏返しなので重複を承知で次の弊害を強調します。
①業務のストップ:ベテラン社員は業務マニュアルを必要としません。そのため業務が属人化します。その社員が退職や欠勤により欠けると途端に業務がストップします。基幹業務であれば、会社は大きな打撃を負うことになります。
②不正の温床:業務を単独で長期間行っているケースでは、業務の秘密化や権限の集中が起き易くなります。その結果、最悪では横領等の不正の温床になる可能性があります。何千万円、何億円もの横領事件はニュースになりますが、もっと少額の横領は枚挙に暇がないくらいに起きているようです。いずれもその道一筋のベテラン社員によるものが大半です。
③業務改善の遅延:長期にわたって同じ業務に携わることはマンネリ化を促し、現行の方法から他の方法に変えることに抵抗を覚えることが多くなります。誰でも新しいことはリスキーです。時代はデジタル化の進展で変化していますが、これを取り入れないで昔ながらの方法で済まし続けることにより業務改善が進みません。
配置転換が困難な会社は
会社の規模や業態によっては配置転換をしようにもできないところがあります。このような会社では弊害を防止するには会社による積極的な働きかけが必要になります。
①刺激策:業務改善を促すためには刺激が必要です。新しいテーマを与えたり業務を拡大させたりにより自らが工夫する機会を増やします。それも難しいときには、卑近な例ですがエクセルで全ての書類を作成している社員にはワードによる作成を強いたり、ワードで表を作成している社員にはエクセルを使わせたりでも刺激になります。
②業務シェア:ベテラン社員が単独で行っている業務があれば他の社員にシェアさせます。新たに業務に就く社員には簡単なものでよいので業務マニュアルを作成させます。新人社員がいれば、教育の一環としてのその部署への業務実習を課すことでもよいでしょう。
まとめ
配置転換は目的ではありません。社内の活気を保ち、業務改善の促進や業務がストップすることの防止が狙いです。そのために業務の属人化や権限の固定化を避けなければなりません。要は業務の風通しをよくするために最大限の配慮を払うことに尽きます。