Q:社員が、飲酒運転をして死亡事故を起こしました。全社を挙げて安全運転活動を進めていた矢先の事故で、会社として懲戒処分を考えています。事故があったのは休日で業務とは関係ありません。
A:懲戒規定に事由があれば、懲戒処分をすることができます。
労働契約法第15条の懲戒で、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」とあります。無効になるのは、客観的に合理的な理由を欠いたときや、社会通念上相当であると認められないときです。逆に、これらの要件を満たせば、懲戒することは有効になると解釈できます。
「客観的に合理的な理由」の「客観的に」とは、懲戒処分する理由が第三者でも分かるということです。飲酒運転をして死亡事故を起こした事実は第三者にも分かりますので、「客観的に」の要件は満たされています。
「合理的な理由」とは、「これこれの行為をしたときは懲戒処分をする」ことが事前に示されていることです。通常は、就業規則に、懲戒をする事由を記載することで示します。懲戒の規定に、「私用を含め飲酒運転中に人身事故をことしたとき」とあれば、「合理的な理由」の要件は満たされます。
「社会通念上相当である」とは、「そんなことで懲戒することを社会は認めますか」と言うことです。これは、会社の姿勢や社会の動向で変わってきます。現在、世の中は飲酒運転に対して厳しい目を向けています。その上、御社は安全運転活動に積極的に取り組んでいる最中ですので、本件事故を起こした社員は会社に対しての裏切りを行ったとも言えます。
これらを考慮すると、懲戒規定に事由があれば、本件の事故を起こした社員を懲戒処分にすることは十分に認められるものと思われます。