10月号 副業・兼業

2018年10月(第113号)

 副業・兼業を希望する方が年々増えている状況下で厚生労働省は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則には1章を追加し副業・兼業を記載しました。今回は、副業・兼業のメリットを考えてみます。

副業・兼業の背景

副業・兼業を行う消極的な理由は、単に収入を増やしたいこと。特に非正規社員では就業時間が短いがために収入も少なく、生活費を補うための副業・兼業が多くあります。積極的な理由では、やりたい仕事、スキルアップ、資格の活用、自己実現とあります。近年は、インターネットの普及により、事業開始が比較的簡単になったことも副業・兼業が増加している背景にあるようです。

副業・兼業の一般原則

副業・兼業を原則禁止または許可制にしている会社が多いのが現状ですが、これを制限している法令はありません。一般論では社員は就業中以外の時間を何に使おうと自由ですので、副業・兼業に制限を受ける理由はありません。
裁判例でも、いくつかの例外を除いて会社の制限を無効としています。

現行法令の問題点

前述の様に副業・兼業を制限している法令はありませんが、とは言っても前提にしたものでもありません。そのため、いざ副業・兼業をしようとすると、いくつかの問題が出てきます。
①労働基準法:複数の会社に雇用されていても、就業は1日8時間、週40時間に制限されています。これを超えるときは36協定の届および割り増し手当の支払いが必要になりますが、どちらの会社に義務があるか明確に規定されていません。
②労災保険:副業・兼業にかかわらず、労災保険は適用されますが、給付は災害が発生した就業先の賃金分しか反映されません。
③雇用保険:同時に2つに会社への加入を認めていないために、給付を受けるときに副業・兼業の収入が反映されません。
④社会保険:制度的に「二以上勤務」はありますが、それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たすことが必要なため、社員で両方に加入できるケースは稀です。このため、傷病手当金や年金に副業・兼業の収入が反映されません。

副業・兼業の対処法

デメリットは、体力消耗による本業への影響や社内情報の漏洩等と色々挙げられますが、会社にも次のようなメリットがあります。
①社外の知識・スキルの獲得
②社員の自律性・自主性の促進
③人材の獲得・流出の防止による競争力の向上
④新たな知識・情報や人脈の獲得による事業機会の拡大
社員に求めていることが、単に指示命令による業務の遂行だけであれば、副業・兼業によるメリットの享受は限定されるでしょう。しかしながら、社員に新しいアイデアや製品・サービスの開発、自働的な働き方を求めるならば、副業・兼業を原則的に自由とし、不都合が予想もしくは発生しそうなときに初めて、これを制限するようなルール作りが望まれます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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