2023年 2月(第165号)
生産性の向上や離職の防止には心理的安全性と共にキャリア安全性が重要と言われています。今回はキャリア安全性の概要およびキャリア安全性の高め方を紹介します。
キャリア安全性とは
キャリア安全性は心理的安全性とは異なり、まだ十分に認知された概念とは言えません。リクルートワークス研究所が2022年に実施した「大手企業における若手育成状況検証調査」で導かれました。心理的安全性と同様にメンタル面の健康度を高める要素になっています。調査は、
①このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」(時間視座)
②「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」(市場視座)
③「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる」(相対視座)
の3項目で行い、その逆数で把握しています。社員の現在・今後のキャリアが今の職場でどの程度安全な状態でいられると認識しているかを捉える尺度となっています。
キャリア形成不満
少し古い資料ですが平成15年9月に「若年者キャリア支援研究会報告書」が厚生労働省職業能力開発局から出されています。ここでは勤続3年超の社員の離職理由に「キャリア形成の見込みがない」が31.6%で3番目に入っています。2番目は「賃金・労働時間が悪い」(32.7%)、1番目は「会社の将来性がない」(36.7%)となっております。キャリア形成に対する不満が賃金や労働時間に対する不満と同様程度に高く、離職に繋がることが示されています。
キャリア安全性の高め方
使える資源に制約の多い中小規模の会社でも、キャリア安全性を高める方策はあります。その内のいくつかを紹介します。
(1)キャリア面談:社員が自身のキャリアをどうしていくか、社員のキャリアに対して会社ができることが何かを考えていくための面談です。社員がキャリアを相談しながら、今の職種でできることや、研修で得たい能力、異動・配置転換で得たい経験を考えていきます。
(2)ジョブカード:厚生労働省ではWebで簡単にジョブカードを作成できるサービスを提供しています。作成により自分自身の強み・弱みや能力に気付き、キャリアプランや実践すべきことが描けるようになります。作成されたジョブカードをキャリア面談に利用することもできます。
(3)キャリアコンサルタント:キャリアプランの作成に外部のキャリアコンサルタントを利用することも有効です。キャリア形成サポートセンターでは、社員に対し、ジョブカードを活用したキャリアコンサルテイングを実施しています。
(4)教育支援:業務あるいはキャリア形成に資する教育・研修を会社が支援することです。支援方法としては、研修費の全額または一部負担、研修休暇の付与、推奨研修の案内等があります。
まとめ
これからの社員は否が応でも自分のキャリアに責任を持たなければなりません。キャリア形成に積極的でない会社の社員は、キャリア安全性が低いとして、早晩会社に見切りをつけることになりかねません。会社として、できる範囲でキャリ形成を支援することが今後益々必要になります。