9月号 残業代不払い

2018年 9月(第112号)

 厚生労働省は、このたび平成29年度に残業代を支払っていない会社に対して労働基準法違反で是正指導した全国の結果を取りまとめました。今回は、残業代不払いの実態及び不払い解消のための取り組み事例を紹介します。

平成29年度残業代不払い実態の特徴

平成26年11月1日の「過労死等防止対策推進法」の施行により、労働基準監督署の労働時間に対する監督指導は年々強まっております。その結果、平成29年度の是正指導を受けた会社数、対象社員数、是正指導金額は次のように全てで前年度を上回っています。
①是正企業数: 1,870企業
(前年度比 39%の増)
②対象社員数:20万5,235人
(同 109%の増)
③是正指導金額:446億4,195万円
(同 251%の増)
特に、対象社員数、是正指導金額の増加率が前年度比100%を超える高率であることが特徴です。ちなみに、対象社員一人当たりの是正指導金額は22万円となっています。

立ち入り調査、監督指導のきっかけ

労働基準監督署が立ち入り調査をするきっかけは色々です。多いのは、社員からの情報です。社員には退職した者も含まれます。その他に、定期監督や最近ではインターネット上の書き込み情報を監視、収集して必要な立ち入り調査をすることもあります。

残業代不払の確認例

労働基準監督署による残業代不払いの確認方法には次のような例があります。
①タイムカード打刻後に作業を行うよう指示していた会社で、タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や社員へのヒアリング調査から、タイムカード打刻後の勤務が確認された。
②自己申告制で労働時間を管理していた会社では、申告記録とパソコンのログや入退室記録とのかい離により、残業が確認された。
③社員が「残業申請書」を提出し、上司が承認する制度で労働時間管理を行っていた会社では、残業申請書の提出をしていない社員のメール送信記録から、残業が確認された。

残業代不払い解消のための取組事例

残業代不払いは、違法であるばかりでなく社員と会社の信頼関係を破壊します。そのため会社には次例の様な真摯な取り組みが求められます。
①社長が「賃金不払残業撲滅」を宣言するとともに、全店舗の店長に方針の説明を行った。
②賃金不払残業撲滅に係る社内ポスターを作成して掲示するとともに、タイムカードの適正打刻に関する研修用DVDを作成し、店長を通じて全社員に対する研修を行った。
③タイムカード打刻後の作業が行われていないことを確認するため、店長が定期的に店舗内を巡回することとした。
④自己申告制のガイドブックを分かりやすい内容に作成し直し、全労働者に周知した。
⑤自己申告の記録と入退室記録との間にかい離があった場合は、上司がその理由を確認する 仕組みを導入した。
⑥自己申告とパソコンログ記録のかい離を自動的に確認する勤怠管理システムを導入した。
⑦労務管理についての課題と改善策を話し合う労使委員会を年2回開催することとした。
もし、残業代の不足が確認されたならば、会社として速やかに改善策を採ることが大切です。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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