2019年 6月(第121号)
2018年7月に受動喫煙防止を盛り込んで改正された健康増進法が2019年に一部施行、更に2020年に全面施行され、受動喫煙を防止するルールが動き始めます。
今回は、受動喫煙防止法とも言われる改正法の職場に与える影響をまとめてみました。
法改正の背景
受動喫煙の健康への悪影響が科学的に明らかにされてきており、肺がんをはじめ心疾患等のリスクを高めるとされています。このことを含め内外の受動喫煙に対する圧力が今回の法改正の背景にあります。①2020年に東京オリンピック・パラリンピックに対して世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は、 「たばこのないオリンピック」を共同で推進するとしていること、②2015年2月に、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が発効し、日本も条約の締約国として、たばこ対策の一層の推進が求められていること、③昭和40年代に80%超あった男性の喫煙率が近年では30%前後までに減少し、反対に嫌煙権を主張する人が増えてきたこと、④平成16年7月に東京地方裁判所で受動喫煙に対する損害賠償が認められたこと等です。
法のあらまし
多くの人が利用する施設を第一種施設、第2種施設および喫煙目的施設に分け、規制を掛けています。第一種施設は学校、病院等の主として受動喫煙により健康を損なう恐れが高い人が利用する施設や行政機関の庁舎で、そこでは敷地内での喫煙を原則禁止としています。第2種施設は、多くの人が利用する施設で第一種施設、喫煙目的施設以外としているので、多くの職場は第2種施設として規制を受けることになります。そこでは原則として屋内での喫煙は禁止になります。会議室の机の上に灰皿が置いてある風景は法の全面施行後は見ることができなくなります。
屋内での喫煙を可能とするためには、喫煙室を設置する方法がありますが、単に喫煙室を設置するだけでは不十分です。指定された標識の掲示や未成年者の立ち入り禁止等の運用ルールを守る必要があります。また喫煙室の設置には、煙が他の部屋へ流出することを防止する技術的な基準をクリアしなければなりません。例えば喫煙室の出入り口では流入する空気の流れが毎秒20cm以上とする基準があり、単に換気扇を設置しただけでは基準をクリアできない可能性があります。
違反者には罰則として20万円から50万円の過料が設けられています。もっとも、違反が直ちに罰則の対象になる訳ではありません。行政が指導、勧告あるいは命令を繰り返しても違反状態が続く場合に都道府県知事等の通知に基づき、地方裁判所が過料額を決定します。
行政の動き
罰則を伴った改正・健康増進法の施行を前に、受動喫煙対策を行う会社への支援策を整備しています。受動喫煙防止対策助成金では基準を満たす喫煙室等の設置に掛かる工費、設備費、備品費、機械装置費などの経費の50%(上限100万円)を支給します。税制面では特別償却(30%)又は税額控除(7%)を適用することにより、会社を支援するとしています。
一方で、社員の募集・求人の際に会社の講じている受動喫煙対策の状況の明示を義務付ける職業安定法の省令改正を予定しています。