2018年 3月号(第106号)
いよいよ今年4月から労働契約法による無期転換制度が本格化します。今回は、無期転換の影響および対策に付いてまとめて見てみます。
無期転換制度とは
この制度については既にご存知のことと思いま」すが、平成25年4月に施行された改正労働契約法第18条により、同じ会社との有期契約を更新して通算5年を超えた社員が、無期契約への変更を申し込むと、会社は原則として当該申込みを承諾したものとみなす制度です。特例法により、①高度専門的知識等を有する者、②定年後に有期契約で継続雇用される高齢者に対しては、例外がありますが、パートタイマーも含めて無期契約に転換されることになります。
転換後の労働条件は別段の定めがある部分を除いては転換前と同条件でよいとされていますので、給与を上げたり、正社員と同じ条件にしたりすることまでは求められていません。
早急にチェックすべき点
就業規則の社員の定義の部分は早急にチェックしなければなりません。もしも、正社員の定義が単に「無期契約で雇用されている社員」の様になっていたら、どうなるでしょうか。転換前と転換後では原則として雇用条件は雇用期間を除いて同じで良いのですが、例外として「別段の定めがある部分を除いて」とあります。正社員の定義が上の様になっていますと、無期転換された社員は定義上は正社員となり、「別段の定め」が適用となりますので、就業規則で定める正社員の雇用条件が全て適用されることになります。それでは、不都合が生じるのであれば、その部分を改正しておくことが必要です。
無期転換後の解雇問題
無期契約社員と有期契約社員との違いで最も大きいのは契約打ち切りに対する解雇と雇止めです。無期契約社員の解雇は難しいが、有期契約社員の雇止めは容易であったのは過去の話です。平成25年4月から無期契約転換制度と同時に施行された労働契約法の雇止めの制限規定によって、①長期間に亘って反復更新したために無期契約と同視できるとき、②更新されると期待することに合理的な理由があるとき、には解雇要件を充たすことが必要とされました。違いは、雇止めが無効となるのは、上の①、②のどちらかの要件を充たし、更に解雇要件を充たさないときに無効となる、つまり2段階の審査を必要とすることだけです。上の①、②の要件を充たしているときには、雇止めの理由が乏しいと雇止めが無効になります。
無期転換前の雇止め
解雇は避けたいがために、無期転換前に能力の劣る社員を雇止めとするには、上の①、②の要件を充たしているときはトラブルに発展する可能性があります。このとき、雇止めをする基準、すなわち「5年を超えて契約更新することがない」旨の規定が整備されているときは、上の②の期待感に合理的な理由がないとして雇止めが認められる可能性が高まります。更に進んで、5年を超えて契約更新する要件を規定し、優秀な社員だけを無期契約に転換する制度を作ることも決して許されないことではありません。