7月号 管理監督者

2022年 7月(第158号)

課長や部長は管理監督者なので残業手当の支払いが不要と判断している会社が多くあります。今回は労働時間、休憩および休日に関する規定が適用されない管理監督者等について考えてみます。

労働基準法による適用除外

労働基準法第41条で労働時間等の規定は、次に該当する者には適用しないとしています。

  1.  農業、畜産、水産業等に従事する者
  2.  監督・管理または機密の事務を取り扱う者
  3.  許可を受けた監視・断続的労働者

この中で、1.は自然条件に大きく影響を受け、計画的に労働時間を管理することが困難な業種です。また3.は行政官庁の許可が必要ですから、該当性に問題は生じません。ところが2.は会社が規定する管理職と法が規定する管理監督者の概念が異なり、しばしば問題化します。更に管理監督者の要件は、法令に明確な基準が示されていないことも問題をより複雑化させています。

行政による判断基準

厚生労働省の通達(昭63.3.14基発第150号)に行政による判断基準が記載されています。これによると管理監督者とは、「部長や工場長等の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」で、その判断には、

  1.  労働時間等の規制を超えての労働には割増賃金を支払うことが大原則であり、人事管理・営業政策上から任命する役職者のすべてが管理監督者とは言えない
  2.  法の規制の枠を超えて活動することが要請され労働時間等の規制になじまない立場にある
  3.  賃金等が一般社員に比して優遇されている

を考慮するとしています。

裁判所の判断

最高裁判所の判断は未だありません。地方裁判所や高等裁判所の管理監督者該当性は行政の判断基準を踏襲して次の観点から判断されています。

  1.  経営者と一体的な立場の重要な職務と責任・権限を付与されている
  2.  労働時間を自己の裁量で管理できる
  3.  給与等が地位や職責にふさわしい

裁判例としては、日本マクドナルド割増賃金請求事件(東京地裁 平20.1.28判決)が有名です。この事件では、店長を管理監督者であるとして時間外割増手当を支払っていなかったが、店長の給与を時給換算すると、アルバイト社員よりも少なかったと言うことです。管理監督者でないと判断されても当然でした。

給与面では優遇されていても三井住友トラスト・アセットマネジメント事件(東京地裁 令3.2.17判決)や日産自動車事件(横浜地裁 平31.3.26判決)では、管理監督者にふさわしい職務と責任、権限を与えられていないとして管理監督者性が否定されています。

まとめ

良し悪しは別として労働基準法は労働時間に対して給与を支払うことが原則です。管理監督者や裁量労働制による例外が規定されていますが、あくまで例外です。例外事案に該当するか否かは厳密に判断する必要があります。

管理監督者の例であれば、「法の規制の枠を超えて活動することが要請され、労働時間等の規制になじまない」業務であることをまず確認すべきです。役職名が何であれ、これをクリアしない者は管理監督者ではありえません。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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