11月号 過労死等防止法

2014年11月(第66号)

2014年6月に過労死等防止対策推進法(過労死等防止法)が成立し、11月から施行されました。今回は、同法が制定された背景、内容、そして影響について考えてみます。

過労死等防止法制定の背景

過労死防止法が制定となった背景には、主として3つの力が働いたと言われています。1つ目は、過労死等で亡くなった方の遺族とこの問題に取り組む弁護士を中心に2011年頃から法整備を求める活動が行われていたことです。2つ目は、海外からの圧力です。Karoushiが国際語になってから4半世紀を経たにも関わらず、業務に起因する自殺者が2千数百人に達していることは国際的によく知られています。これに対して2013年5月、国連は過労死防止対策の強化の勧告を行いました。3つ目は、精神障害の労災の申請件数がここ数年増え続けていることです。これらを受けて、2013年6月に党派を超えた国会議員連盟が発足し、1年後の成立に至りました。

過労死防止法とは

全14条からなるこの法律は、過労死等の防止を国の責務としたことに大きな特徴があります。その上で、①過労死等の防止対策に関する大綱の策定、②過労死等の概要および施策の状況に関する年次報告書の国会への提出、③過労死等防止対策推進協議会の設置、④過労死等防止啓発月間の設定等を規定しています。また、過労死等の防止対策として、⑤過労死等に関する調査研究の実施、⑥教育、広報による啓発、⑦適切な体制の整備、⑧過労死等の防止に関する民間団体への支援、⑨過労死等の防止に必要な法制上・財政上の措置などを規定しています。

法の施行を受けての動き

11月に過労死等防止啓発月間が制定されたことで、厚生労働省は遺族や弁護士らが出席するシンポジウムを開く他、過重労働解消相談ダイヤルを開設したり、労働基準監督署が過重労働を重点的に調査・指導する体制を整えたりしています。
民間でも、法の制定を求めた遺族や弁護士らのグループが、「過労死防止全国センター」を設立し、過労死防止の機運を高める活動を始めています。

今後の動き

過労死防止法は労働基準法の様に罰則を設けたものでも、労働契約法の様にルールを定めたものでもありません。あくまでも基本法の性格です。しかし、過労死等の防止に必要な法制上の措置を敢えて規定している以上、過労死等に関する調査研究の結果によっては新たな規制を課してくることは容易に推測できます。
労働基準監督署は既にサービス残業の有無や36協定の順守状況、長時間労働者に対する医師による面談の実施状況の確認を強化しています。その中で、過労死等の防止に必要があれば、法整備を急ぐでしょう。
法の規制に有無に関わらず、社員を過重労働で不幸にすることは許されません。過労死防止法の施行を機に、会社として労働実態を確認し、過重労働があれば必要な改善策を取るべきでしょう。

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