11月号 最低賃金制度

2015年11月(第78号)

10月1日から都道府県の最低賃金が順次改正されています。平成27年度の全国平均の上げ幅は物価上昇率を超える2%強の18円と、ここ数年の傾向を継続しています。今回は、最低賃金制度の概要、検算方法、罰則等をまとめてみました。

最低賃金制度とは

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づいて国が最低限度の時給相当額(最低賃金額)を定め、会社に、その金額以上の給与の支払いを義務化する制度です。最低賃金は2種類あり、一つは地域別、もう一つは産業別です。前者は都道府県単位に設定され、後者は特定の産業について設定されます。特定の産業には、非鉄金属製造業、百貨店や総合スーパー、自動車販売等の6業種が指定されていて、地域別よりも高く設定されています。産業別の最低賃金額は毎年12月ごろに改正されます。

検算方法

時間当たりの給与額が、最低賃金額以上になっていることを調べることが必要です。

①時給制のときは簡単で、時給額が最低賃金額以上になっていればOKです。②日給制のときは、週の給与総額をその週の労働時間で割り、時間当たりの給与額を算出します。このとき、一日8時間、週40時間を超えた時間は、1.25倍することが肝要です。③月給制のときは、月給を月平均の所定労働時間で割り、時間当たりの給与額を算出します。④歩合制のときは、歩合総額をその月の総労働時間で割り、時間当たりの給与額を算出します。時間外労働があれば、その時間と上の時間当たりの給与額の0.25倍を掛けた金額を時間外割増手当として加算した額が総支給額となります。

2つ以上の給与体系で構成されているときは、各々の時間当たりの給与額を合算します。

対象とならない給与

時間当たりの給与額に含めてはいけない給与手当があります。通勤手当、家族手当と精皆勤手当です。これらは、名称でなく実質で判断されますので、手当ごとの支給要件を給与規程等で定義しておくことが必要です。

賞与や臨時給与も対象になりません。賞与額が高くても、月々の時間当たりの給与額が最低賃金額未満では違反です。

当然ですが、残業手当や休日出勤手当、深夜勤務手当も対象になりません。注意の必要なのが、定額残業手当です。残業が一定時間に達していないとしても、定額残業代を検算の対象に入れることはできません。

違反のとき

最低賃金額に満たない給与が支払われているときは、労働基準監督官から行政指導を受けます。悪質なときは、書類送検され、裁判で有罪となると50万円以下の罰金刑に処せられます。

もし検算の結果、違反であることがわかったときは、差額を早めに支払っておくことです。

減額の特例

最低賃金法は、原則として業種や職種、会社規模、正社員やパート等の雇用形態に係りなく全ての社員に適用されます。ただし、心身に障害があり著しく能力の低い人や、軽易な業務や労働密度の低い業務に就く人には、例外として減額の特例があります。特例の適用を受けるためには、労働基準監督署を通じて労働局長に減額の特例許可申請書を提出して、許可を受けることになります。

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