Q: 業務中に怪我をした社員が健康保険証で治療を受けました。労災保険に切り替えられますか。また、手続きはどのようにするのでしょうか。
A: 労災保険に変えられます。手続きは、受診した病院が労災指定機関か否か等で変わってきます。
業務中や通勤途上の怪我は健康保険を使うことはできません。このような怪我のときは、病院の窓口で「労働災害」または「通勤災害」での治療であることを伝えるのが原則です。しかし、健康保険証を提示して医療費の3割を支払ってしまうことがあります。
(1)労災指定機関に受診したとき
労災指定機関とは、都道府県労働局長が指定した医療機関です。労災や通災に遭ったとき、医療費を負担せずに治療や投薬を受けることができる病院や薬局です。
労災指定機関で健康保険証を使ってしまったときは、労災保険の様式第5号または様式第16号の3の給付請求書を提出し、その上で医療費の清算をします。
運がいいと、様式第5号等を病院や薬局の窓口に提出しただけで負担した3割の医療費をその場で返却されて、かつ残り7割の医療費の清算を病院や薬局でしてくれることがあります。
7割の医療費の清算を病院や薬局でしてくれないときは、協会けんぽ等の健康保険組合に医療費7割分を支払って清算し、様式第7号または第16号の5の費用請求書にその領収書を添付して労働基準監督署に提出します。そうすると労働基準監督署から指定の口座に医療費の7割分が振り込まれることになります。
(2)労災指定機関でないところで受診したとき
労災指定機関でないところでは清算することができません。医療機関によって多少の違いがありますが医療費の7割をいったん健康保険組合に支払い、(1)と同様に様式第7号または第16号の5の費用請求書に領収書を添付して労働基準監督署に提出します。これにより労働基準監督署から指定の口座に医療費全額分が振り込まれることになります。
労災指定病院・クリニックは厚生労働省のデータベースで調べることができます。全国で4万機関弱あります。労災指定薬局は4万8千ほどありますが、データベースがないので個々の薬局のホームページで確認するか、電話等で問い合わせすることになります。
「労働災害」または「通勤災害」にあったときは労災指定機関に行く方が便利ですが、一刻を争うときや指定機関が分からないときは、近くの病院・クリニックで治療を受けても構いません。ただし、医療費全額を立て替えする形になります。
(2024年 4月)