9月号 契約社員のルール変更

平成24年8月10日に労働契約法が改正・施行され、有期雇用契約社員いわゆる契約社員に対するルールが法制化されました。契約社員を雇用している会社には影響が大きい改正ですので、ポイントを紹介します。

労働契約法とは

労働契約法は、平成19年12月にそれまでの労働裁判で確立した判例を元にして作られた法律です。まだ5年足らずの新しい法律です。労働基準法と比べると知名度は今1つです。罰則がないことから軽く見ている経営者がいることは事実です。しかし労働トラブルが、労働審判や裁判に持ち込まれると、当然ながらこの法律が裁きの基準となります。その意味から、重要な法律ですし、これからますます多くのルールが盛り込まれる法律です。

雇止めの法理

比較的単純な業務には正社員ではなく契約社員を用いている会社があります。ところが何回か更新を繰り返しているうちに、徐々に知識と経験が増えて、高度な業務を行うようになったり、他の社員から頼られる存在になったりします。更新手続きも形式的に契約満了時の前後に契約書に印鑑を押して提出するだけになったり、あるいは社長から「長くうちで働いて欲しい」と声を掛けられるようになったりします。
このような正社員と同じような状態にある契約社員は、客観的に合理的な理由がないときや、社会通念上相当でないときは雇止めすることができないとする規定が法制化されました。
この考え方は、昭和49年の東芝柳町工場事件の最高裁判決を初めとして、多くの判例で確立されたもので、決して目新しいものではありません。とはいえ、法制化により、雇止めに関する裁判結果が予想され易くなったことは確かです。

有期契約から無期契約への転換

勤続5年を超える契約社員は、本人の希望によって雇用契約を「期間の定めのない契約」すなわち無期雇用契約に転換できるルールが導入されました。有期雇用契約を何回更新しても、自動的に無期雇用契約に転化するものではありません。そこで、本人の申し込み手続きによって無期雇用契約に転換できるとしたものです。転換後は、当然に雇止めはできませんから、一方的な契約の解約は解雇しかなく、解雇には労働契約法第16条の解雇権濫用禁止の規定が適用されます。

不合理な労働条件の禁止

契約社員の労働条件が、無期雇用契約社員のものと相違する場合、その理由が不合理であってはならないと規定されました。同じ仕事をしていながら、契約社員と言うだけで給料や福利厚生、教育機会が異なることは、この規定に違反することになります。

改正労働契約法への対処

最も影響の大きい改正が無期雇用契約への転換規定でしょう。6ヶ月のクーリング期間を置けばOKとか、5年未満で雇止めすればOKとかの姑息な手段は会社の発展に寄与しないでしょう。今回の改正を受けて、今まで何時でも雇止めできる安価な労働力としての契約社員制度の見直し、すなわち人材を本当の戦力とするための雇用戦略の見直しが求められています。

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