Q:給与振り込みの煩雑さを防ぐために金融機関を1銀行だけにしてきました。先日、新入社員から自分の最寄りの銀行にしてくれと言われました。応じなければならないのでしょうか。
A:振込金融機関を一方的に決めることは労働基準法違反になります。
労働基準法では、賃金の支払に関して、次の5つの原則を設けています。
①通貨支払いの原則
②直接払いの原則
③全額払いの原則
④毎月1回以上払いの原則
⑤一定期日払いの原則
今日では銀行等の金融機関への振り込みが多く利用され、一般的になっていますが、これは例外的な扱いであり、①の通貨で支払うことが原則であることは今も変わりありません。
例外ですので、例外が適用されるための一つに次のルールがあります。
「労働者の同意を得た場合に、労働者が指定する金融機関の本人名義の口座に振り込むことができる」
社員から金融機関と口座の指定があったときに、同意を得られているとされますが、社員本人が、振込ではなく現金での支払いを希望したときには、それに応じる他ありません。
もっとも、現代において、よほどの事情がない限り、現金払いを強く要求するような方は稀ですし、口座振込が当然と認識している方が大半かもしれません。それでも会社側が一方的に金融機関を指定して振込をすると、労働基準法違反になります。
労働者本人の意向を無視して金融機関を指定することは法違反ですが、特定の金融機関での口座開設とその口座への振込について同意してほしいと依頼することは自体は法違反ではありません。話し合いがつかないときに、社員希望の金融機関への振り込みを拒否して、現金払いにすることも法違反ではありません。