2重就業

Q: 採用試験に合格した者が、実は前の会社を未だ退職していないで有給休暇を消化中であると申し出ました。直ぐにでも来て欲しいが、問題ありますか。

A: 法律で禁止はされていませんが、問題はあります。

有給休暇中は出勤こそしていませんが、前の会社に在籍中です。その者が御社で就業することは2重就業状態になります。2重就業を直接的に禁止している法律はありませんが、次のような問題はあります。
① 雇用保険上の問題
② 社会保険上の問題
③ 労働基準法上の問題

①の雇用保険上の問題とは、雇用保険では同時に2つの会社の被保険者になれないことです。採用しても、その者の雇用保険の被保険者資格取得の手続きをすることはできません。手続きをしても、ハローワークでは前職の資格喪失がなされていないとして拒否されます。
実際の入社日と雇用保険の資格取得日が異なることから、将来トラブルになる可能性があります。
②の社会保険上の問題とは、手続きの問題です。社会保険では2重就業を認めていますので、被保険者資格取得の手続きはできます。しかしながら、社会保険料は2社の給与の合算額に基づいて計算し、負担額はそれぞれの給与額で案分することになります。このため、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出し、前の会社を退職後、改めて手続きする必要があります。
手続きの煩雑さや、保険料の徴収が例外扱いになるために、トラブルになる可能性があります。
③の労働基準法上の問題は、有給休暇の趣旨に関することです。そもそも労働基準法で年次有給休暇を設定した趣旨は労働の疲れを癒すためのものです。その有給休暇を連続して取得して、しかもその間を他社で就業するということは如何なことか。そんな問題です。

御社が直ぐにでも戦力を必要としている事情は理解できますが、トラブルを回避するために、前職を正式に退職したのちに採用することをお勧めします。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。