有給休暇制度はよく知られた制度ですが、誤解の多い制度でもあります。年次休手当の計算方法がよくわからないといったこともよくあります。有給休暇を使ったときの年次休手当は、労働基準法で3つの方法が認められています。①通常の賃金、②平均賃金、③協定を結ぶことにより健康保険の標準報酬日額に相当する額。どの方法を採用するかによって、年次休手当の額が変わってきます。
①の通常の賃金とは、年次休を使ったからといって月の給与が基本的にかわらないことです。多くの人が、年次休とはそのようなものと考えているかもしれません。
②の平均賃金は、労働基準法で頻繁にでてくる平均賃金額を計算して、これを年次休手当とするものです。ちなみに、平均賃金とは、過去3ヶ月の総賃金を、その間の歴日数で割った値です。残業代等で毎月の給料が異なると、平均賃金は計算するたびに増減することになります。つまり、計算が煩雑ということです。たとえば、日給1万円の人が1月から3月まで、それぞれ19日、19日、22日と3か月で60日働いたとすると、過去3ヶ月の総賃金は60万円。この間の歴日数は、90日ですから、平均賃金は6,667円となり、日給の10,000円と比べるとずいぶん少なくなります。ただし、この間に残業手当が多くあると、その分増えることになります。
③の標準報酬日額は、基本的に年に一回決まると同じ金額ですから、年次休手当の計算は簡単です。
大切なことは、採用している①から③の方法を就業規則に明示しておくことです。そうしないと、「年次休を使ったら給与をカットされた」との誤解を招きかねません。誤解は不信を招きます。不信の種は徹底的に取り除くこと、そのためには就業規則を整備しておくことです。
年次休手当の計算方法を就業規則に記載すると同時に、欠勤や遅刻のときの控除額を計算する方法も同様に明示しておかないと片手落ちになります。