10月号 心理的安全性

2021年10月(第149号)

グーグルが2015年11月に発表した「心理的安全性は成功するチームで最も重要」との研究結果は注目を集めました。今回は生産性向上に重要とされた心理的安全性の概略を紹介します。

心理的安全性とは

地位や経験に関わらず会社やチームの誰もが自由に意見を言い、素朴な疑問をペナルティーなしに述べられる状態を表す概念です。ここでのペナルティーは非常に広い意味で使われています。意見を言ったことにより、チームから外されたり、査定が下げられたりは明確なペナルティーです。明確なペナルティーだけでなくても、「これを言ったら笑われるかな」、「面倒くさい者と思われるかな」、「経験豊かな先輩の言うことだから間違いないだろう」、と思わざるを得ない環境もペナルティー「あり」とされます。あるいは改善提案に対して、「そんなの上手くいくの?」と怪訝な様子をされる環境も心理的安全性が低い状態です。

グーグルの研究

巨大IT企業の一つのグーグルでは社内に常に数百もの業務チームを走らせているようです。同社は2012年にアリストテレスと称する労働改革プロジェクトを開始し、自社の中での「生産性の高い業務チームの条件」を調査しました。このプロジェクトには社内の技術者だけでなく社外の組織心理学や社会学の専門家が加わりました。

4年間に及ぶ調査の結果、業務チームの生産性の向上に重要なのは「優秀な能力のメンバーを集める」ことよりも、「チーム内のメンバーが協力し合っている」ことであることを発見し、心理的安全性が最も重要と結論付けました。

心理的安全性を高めるために

心理的安全性の高い環境が重要と判っても簡単には改善できません。会議での発言が少ないからと「なんでも自由に発言してください」と促しても誰も発言しません。何故なら会社は歴史を背負っているからです。この歴史の中で有形無形のペナルティーを科せられた記憶が深く残されています。この記憶を払拭することなしに心理的安全性を高めることは残念ながら困難です。

経営者やリーダーが心理的安全性を高める手順を私見を交えて示します。①心理的安全性は極めて重要で必要であると認識する。②心理的安全性を低めている理由を分析する。③その理由毎の自身の関与を分析する。④自身の改善行動を決め、実行する。⑤定期的に改善度合いを測定する。

改善のための具体的な種々のテクニックが提案されていますが、ここでは省略します。

心理的安全性が向上により生産性と共に業績も向上しますが、その結果が出るまでには時間が掛かります。自身の行動改善の結果は定性的ですが次の変化で知ることができます。①話しやすさの雰囲気が増えた。②助け合う場面が増えた。③挑戦する姿勢が増えた。④個性を発揮・歓迎する雰囲気が増えた。

まとめ

経営環境の変化の度合いは増々早くなり、従来の成功体験が使い物にならない場面が増えています。そのような経営環境では社員全員の力を結集しなくては競争に打ち勝つことが困難です。心理的安全性は、社員全員が力を合わせて能力を全開するための基盤になりうるものです。

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