6月号 カスタマーハラスメント

2024年 6月(第181号)

 今月の事務所通信は、「カスタマーハラスメント」を取り上げました。カスタマーハラスメントの加害者は社外ですので、対策に困難さが付きまといます。とくに、加害者が大事な取引先であったりSNSのインフルエンサーであったりすると、影響を心配して毅然たる姿勢を取りづらいところがあります。しかし、そのために社員が傷ついたり病んだりしては会社としての労働環境を健全に維持・管理する責務を果たすことができません。カスハラを懸念している会社は、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にしながら対策を検討してみてください。
今回は触れていませんが、会社がカスハラの加害者になることもありえます。業務委託をしているフリーランスや、サプライヤー等の取引先に対してカスハラを働いている社員に対しては、会社として厳正に対処しなければなりません。

昨今、カスタマーハラスメン略してカスハラという言葉をよく聞くようになりました。今回は、カスハラと他のハラスメントとの相違点や会社としての対処法等を含めてまとめてみます。

他のハラスメントの相違点

どちらも優越的地位を利用してのハラスメントですが、他のハラスメントの加害者は社内であるのに対して、カスハラの加害者は社外です。従って社内ルールを設けても加害者に対して会社が直接の規制や罰則を加えることができません。このことがカスハラ対策を困難にしています。

行政の動き

カスハラを受けた社員が、それが元でメンタルの不調を訴えるケースが増えています。このため厚生労働省は2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(以下、カスハラ指針という)を作成しました。指針は、先に作成したパワーハラスメント対策指針を参照しながらもカスハラに特化した次の内容を含んでいます。①カスハラの定義、②発生状況、③カスハラ対策の必要性、④会社が取り組むべきカスハラ対策。

2023年9月には労災認定基準の「業務による心理的負荷評価表」の見直しを行い、心理的負荷の具体的出来事に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」ことを追加し、カスハラによる精神の不調を労災として容易に認定できる道を開きました。

2024年5月の新聞報道によると厚生労働省は労働施策総合推進法を改正して会社に社員をカスハラから守る対策を義務づける検討に入ったとしています。同法は2019年の改正でパワハラ防止を会社の責務とし、社員の相談に応じて適切に対処する体制の整備を求めている法律です。ここにカスハラ防止策を追加する形の改正を検討しているようです。

会社が取り組むべきカスハラ対策

カスハラの影響は、社員のメンタル不調を引き起こすだけではありません。会社にとっても時間の浪費、業務上の支障、金銭的損失、会社イメージ低下等の悪影響があります。加害者が社外の者だからと言って会社に責任がないわけではありません。事実カスハラに不適切な対応を取ったとして安全配慮義務違反を問い、損害賠償を課した裁判例もあります。

カスハラ対策の基本的な枠組みをカスハラ指針から抜粋します。①基本方針の明確化、②相談体制の整備、③カスハラ行為への対応体制の整備、④社内ルールの教育・研修、⑤社員への配慮措置、⑥再発防止対策等。①のカスハラを防止する旨の会社の基本方針をトップ自らが発信することが重要です。これにより社員に安心感が育まれます。またカスハラを受けた社員はトラブルに際して発言がしやすくなり周囲の協力でトラブル解消や再発防止につなげることができます。

カスハラ対策の課題

カスハラの判断基準が明確でないために正当なクレームと区別がしづらく毅然とした態度を取れないこと、また顧客第一主義を掲げる会社では顧客の言いなりになり易い等の課題があります。

まとめ

カスハラ対策の目的は第一義的に加害者から社員を守ることです。「お客様は神様です」と言われますが、顧客の理不尽な過度の要求には「ノー」と言える企業風土への改革も必要です。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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