1月号 中途退職者の給与計算

2024年 1月(第176号)

今月の事務所通信は、「中途退職者の給与計算」と題して実務的な話題としました。
1年単位の変形労働時間制やフレックスタイム制では中途の入退職時の清算方法が労働基準法で規定されています。また日給月給制に関して規制はありませんが、合理的な日割り計算、時割り計算が雇用条件として規定しておくことが求められます。固定残業代に関しては、残業代不足に陥らないよう説明を加えました。

月や年の途中で退職したとき、給与計算が通常と異なるケースがあります。今回は、そのようなときの給与計算を整理してみます。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制ではあくまで全期間を通じて週の労働時間が平均で40時間以下になることを前提にしています。期の中途での退職や入社では前提が崩れます。よって割増賃金精算の手続きが必要になります。

中途退職者の割増賃金清算は、次のように行います(労働基準法第32条の4の2)。変形労働時間制の初日から退職日までの所定労働時間が、その期間の法定労働時間を超えた時間分が割増対象で、その分の割増対象時間を精算することになります。法定労働時間は、その期間の歴日数を7で割り、それに40を掛けた時間です。中途入社では入社日から変形労働時間制の終日までの期間で同様の計算を行います。

上記は年間当たりの割増対象時間の計算であり、1日や1週当たりの時間は原則通り計算し、割増を支払うことになります。

フレックスタイム制

清算期間が1ヶ月を超えるとき、清算期間の中途での退職や入社があると上記の年間当たりと同様の割増対象時間の清算手続きが必要になります(労働基準法第32条の3の2)。

清算期間が1ヶ月を超えないときは清算の規定がありません。清算期間の中途で退職、入社した者には通常の清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間に対してだけ割増を支払うことで良いようです。

1ヶ月単位の変形労働時間制

清算方法は規定されておりません。変形期間の中途での退職や入社したときには1日、1週当たりの割増対象時間分の割増を支払えば、それ以上の精算を行う必要はありません。

日給月給制

ここまでの説明は割増対象時間の算定に関するものです。日給月給制の中途入退職の問題は、基本給や役職手当のような月極で支給されている給与の配分方法です。勤務日数に関わらず全額を支給するときは関係ありません。配分方法に関しては法的な規定はありません。就業規則等の雇用条件に記載された合理的で社会通念上許される日割り計算や時間割り計算に基づいて支払えば労働基準法違反に問われることはありません。

固定残業代

算定期間中途での退職や入社に対しての固定残業代の支払い方法も法的な規定はありません。しかし単純な日割り計算を行うと退職直前や入社直後に残業が集中しているケースでは残業代不足になることがあり得ます。通常の給与計算時と同様に実際の残業代と固定残業代を比較し、前者が多いときは当然に差額を支払うことになります。

まとめ

期限の定めのない契約の社員は何時でも退職できます。退職を延ばすお願いはできますが、会社の都合で退職日を決めることはできません。お願いはできても1年単位の変形労働時間制の変形対象期間末日までの退職延期は簡単に受け入れられるものではありません。1年単位の変形労働時間制やフレックスタイム制を採っている会社では通常と異なる給与計算に成り得ることを認識しておく必要があります。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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