Q: 長らく入退院を繰り返している社員から医療費の重圧を嘆かれました。負担を低減する方法はありますか。既に限度額適用認定証を医療機関に提出してあります。
A: 多数回該当や世帯合算制度を利用して負担を低減できるときがあります。
高額療養費制度を適用していても長期間にわたる入退院の繰り返しによる医療費の支払いは家計を強く圧迫することになります。そこで、高額療養費の限度額適用に加えて、世帯合算や多数回該当制度により負担額を更に軽減するしくみが用意されています。
(1)世帯合算
高額療養費の限度額は病院毎に適用されます。入院と通院では別扱いになります。家族がいる場合にも限度額は適用になりますが、この場合も本人とは別扱いになります。このように、限度額が適用されても、病院への掛かり方に依っては高額の医療費を支払うことになります。そこで本人と家族の、限度額に達していない医療費を含めて支払い額を合算し限度額以上の支払い額を還付される仕組みが世帯合算制度です。
70歳以上の方では支払い額の多少に関わらず合算できますが、69歳以下の方は支払い額が21,000円以上の分だけが合算できます。
還付を受けるためには、高額療養費の支給申請手続きをする必要があります。申請には時効がありますが、診療を受けてから2年以内であれば過去に遡って申請することができます。
(2)多数回該当
多数回該当とは、過去12ヵ月間に3回以上、支払いが限度額に達したときに4回目から限度額が引き下げられる制度です。引き下げ額は収入により変わります。例えば、年収約370~約770万円の方ですと、通常の限度額は80,100円+αです。これが4回目以降は44,400円となり、負担を低減することができます。
この手続きは高額療養費の支給申請書に過去12ヵ月間に限度額に達した月を記入することで行います。
上で説明した多数回該当や世帯合算制度は「月」単位での負担額を低減します。この制度を適用しても、なお重い負担があるケースでは、「年」単位で負担を軽減する制度として高額医療・高額介護合算療養費制度があります。毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の支払い額を合計し、基準額を超えた場合に超えた金額の還付を受けることができます。
税制面でも医療費控除制度があります。これを含めて利用を勧めて下さい。
(2021/ 5回答)