介護休業

Q: 3月に契約更新時期を控えている有期契約社員が昨年12月から実兄の介護のために休んでいます。業務に支障が出ているので雇止めできますか。
 

A: 雇用契約で締結した雇止めの要件を満たしていれば雇止めはできます。ただし、介護休業の取得を申し出ていないことに疑問が残ります。

例えば雇止めの要件に「勤務実績不良」があれば、既に2ヶ月近く休んでいる社員を3月の契約更新時に雇止めすることは一般論としてあり得ます。
しかし問題は休んでいる理由が「実兄の介護」である点です。

育児介護休業法第11条では「期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。」とあります。3月に更新時期を控えているといっても、「労働契約が満了することが明らか」と言えない以上、既に介護休業日数を使い切っていない等の他の要件が満たされていていれば介護休業の申出ができます。もっとも介護休業の申出をするのは本人ですので、職場復帰する意思がないとして「介護休業制度を使わない」選択もあり得ます。問題は、介護休業制度を「本人が利用できる状態」になっていたかによって変わります。

「本人が利用できる状態」とは、介護休業規程等が整備され、これが周知されている状態です。周知とは法律的には規程等をいつでも閲覧できる状態にあればよいのですが、感情的には制度概要を教えることまでになります。周知されている状態で制度を利用しないのは本人の選択ですので、その結果、雇止めをしても問題は少ないでしょう。

反対に周知していなかったときの対処です。
今からでも介護休業制度を説明して本人の意思を確認することです。利用する意思があるときは、法律では申出は介護休業に入る2週間前までになっていますが、会社の裁量で遡って介護休業とすることも可能です。このときは、介護休業を使用したことを理由に不利益な取り扱いをすることは法16条で禁止されていますので、雇止めはできません。

余談になりますが、遡って介護休業を取ったときでも、休業終了後に申請することにより雇用保険の介護休業給付金を受けることができます。

(2023年 2月 回答)

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