4月号 降格処分

2017年4月(第95号)

降格処分というと多くの場合に懲戒処分をイメージしますが、大きく3つのケースがあります。①責任を問う形での降格 (懲戒降格)、②能力が欠けるための降格 (不適任降格)、③組織の変革に伴う降格 (リストラ降格)。今回は①の懲戒降格を取り上げ、判例をもとに整理してみます。

懲戒降格とは

社員の不正行為や過失に対して、懲罰的に人事等級や職位を下げることです。降格に伴って給与も下がることが多く、降格された社員にとっては大きな不利益となりますので、トラブルになっているケースがあります。懲戒降格に限らず、降格処分は慎重に行うことが必要です。

アメリカン・スクール事件

学校の施設管理部長が取引業者から仕事の発注の見返りに長期にわたり多額の謝礼を受け取っていたことが発覚した。学校は、地位を利用して私利を図り、学校に損害を与えただけでなく、学校の業務の適正な管理遂行を害した行為として、管理部長の職を解き、施設の管理アシスタント・マネージャーに降格したもの。施設管理部長は、この処分は無効であると裁判所に訴えた。
裁判所は、能力・資質が、現在の地位にふさわしくないと判断される場合に降格することは人事権の行使として当然に認められると、処分は有効と判示した。

星電社事件

社員からの告発状に基づいて会社が調査をした結果、部長職にあった者が飲酒運転、朝礼への遅刻、駐車場での宿泊、酒気帯びでの出社が確認され、一般職に降格されたもの。部長は、就業規則に根拠がない懲戒処分は無効と主張した。
裁判所は、本処分は懲戒処分ではなく人事権の裁量的行為に当たるものであり、不当とは認められないとして訴えを退けた。

S輸送事件

運送会社の営業所次長が2人の同僚と派遣社員の女性と居酒屋で飲食をした。その後、酔ってベンチで嘔吐した女性のタクシーに同乗し、家に向かう途中、彼女のスカートを引っ張り上げた。女性は、職場の上司である総務部副部長に、セクハラ被害を申告、相談した。総務部副部長は、営業所次長からの説明を鵜呑みにしてセクハラの事実はないと上層部に報告した。その後、会社は被害事実を認め、社長が謝罪するに至った。会社は、営業所次長を次長代理に、総務部副部長を適切に処理すべき職責を怠ったとして経理課長に降格した。2人は降格処分の無効を訴えた。
裁判所は、降格処分には合理的な理由があり、会社が有する人事権の裁量の範囲内の措置として処分は有効と判示した。

まとめ

裁判所が有効と判示した降格処分の3事例を示しました。どれも、不祥事に対して、懲戒処分でなく人事権の裁量範囲の措置としているところは注目すべきでしょう。懲戒処分であれば、労働基準法の制裁の制限規定に抵触し、処分無効と判示された可能性を拭うことができません。
人事権に関しては、懲戒処分と異なり就業規則の規定は不要とされていますが、人事規程を整備して、役職人事の透明化・公平化を図ることが労務トラブルの未然防止に必要でしょう。

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