10月号 リハビリ出勤制度

2015年10月(第77号)

メンタル系の疾患で休業中の社員がいる会社から相談を受けることがあります。難しいのは復職です。メンタル系の疾患では、全治したことの見極めが難しく、復職後に再発して再度休業となるケースもまれではありません。
今回は、復職に向けてのリハビリ出勤制度について、考えてみました。

リハビリ出勤とは

リハビリ出勤あるいは試し出勤とは、休業からの復職を前にした社員が、慣らしのために出勤や通勤する形態です。これに関しては法が整備されていませんので、明確な定義も位置付けもないのが実情です。そもそもリハビリテーションとは、治療の一環として医師の指導のもとに治療施設内で行われるものですが、リハビリ出勤では、医師もいなければ、治療施設でもありません。①出勤だけをして直ぐに帰宅するもの、②出勤しても仕事をしないもの、③簡単な仕事をするなど、本人の状況や会社により実施形態も様々です。給与も、有給であったり無給であったりと様々です。

労働基準法との関係

労働基準法では、会社の指揮命令下にあれば労働時間となり、給与の支払い義務が発生します。たとえ本人との間で無給の合意があったとしても、最低賃金を下回る契約は無効となり、無給であれば会社は労働基準法違反に問われます。

傷病手当金との関係

健康保険法では、病気や怪我のために労務不能で給与を受けられないときに傷病手当金の制度があります。無給のリハビリ出勤をしながら、傷病手当金を受給することには、次の問題があります。
①リハビリ出勤をするためには主治医の労務可能の診断結果を受けて行うことが多いのですが、これでは労務不能とは言えない。②会社が少額でも給与を支払うと、手当金は不支給となる。いずれの場合も、原則としての傷病手当金は支給されません。ただし、保険者によっては、リハビリ出勤中の傷病手当金を例外として認めているところもあるようです。ちなみに、協会けんぽでは、主治医の労務不能の証明がないときでも。本人や産業医の申出書に基づいて審査を行い、傷病手当金の支給を認めることもあるようです。あくまで例外的な措置ですので、支給されないこともあります。保険者に確認することをお勧めします。

スムーズな復職のために

厚生労働省からの委託で中央労働災害防止協会が作成した、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中でも、リハビリ出勤制度を「より早い段階で職場復帰の試みを開始することが出来、結果として早期の復帰に結びつけることが可能となる。」とその有用性を評価しています。
有給でのリハビリ出勤制度には、大きな制約はありません。本人に大きな負担を強いない程度の仕事を徐々に与えて、完全復職を目指します。
無給でのリハビリ出勤のときは、上の労働基準法と傷病手当金との関係で、制約があります。可能であれば主治医と相談の上で、治療の一環としてのリハビリ出勤を位置付けすることが望まれます。リハビリ効果もより期待ができ、傷病手当金の問題も解決しますので、会社と本人双方の負担が少ない形で職場復帰を図ることができます。

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