12月号 雇止めの制限

2017年12月(第103号)

 国は、有期雇用契約は社員にとって不安定な立場に置かれているために、これを是正する政策をとっています。雇止めの制限と平成30年から本格化する無期雇用への転換制度がその現れです。今回は雇止めの制限を、判例を基に見てみます。

雇止めの制限の法的根拠

従来から雇止めに関して、裁判所で争われた事例が多くあります。有名なところでは、東芝柳町工場事件と日立メディコ事件があります。前者は、契約を反復更新することで期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合に、後者は、更新されることに合理的な期待が認められる場合に、ともに解雇のときと同様の理由が必要と判断されたものです。これらの判例を受けて明文化されたのが平成24年8月10日から施行されている改正労働契約法の第19条です。

ジャパンレンタカー事件

22年以上にわたり2ヶ月から6ヶ月の有期契約を更新してきた夜間専門のアルバイトが、顧客トラブルや過労による睡眠障害の発症等を理由に雇止めされたことを訴えた事件。
裁判所は、①22年以上にわたり契約更新を繰り返してきたこと、②業務内容が夜間勤務というだけで正社員とそれほど変わらないものであったこと、③更新手続きは店長と面談で契約書を渡し署名をするよう指示する程度であったことから、更新手続きは形骸化していたとして期間の定めのない労働契約とほぼ同視できると判断した。その上で、会社の主張する、①顧客からのクレーム、②顧客対応が無愛想、③業務懈怠、④睡眠障害の理由を退け、雇止めを無効とした。(平成28年10月25日 津地方裁判所)

札幌交通事件

6ヶ月間の有期契約が2回更新されたタクシーの運転手が、3回目に雇止めされたことを訴えた事件。
裁判所は、①労働条件通知書の内容、②労働組合への「契約は、原則として更新する」旨の説明、更新を拒否されたのは過去に1名しかいなかったこと等から「更新されると期待することには合理的な理由がある」とし、雇止めには解雇と同様の客観的に合理的な理由と社会通念上相当である理由を求めた。結果的には、勤務成績が極めて悪かったことを理由に、雇止めを有効とした。(平成29年3月28日、札幌地方裁判所)

まとめ

改正労働契約法第19条で雇止めの制限が掛かる対象となる有期労働契約は、次の2種類です。
①長期にわたり反復更新され、その雇止めが解雇と社会通念上同視できると認められるもの
②契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められるもの
①の類型は、更新回数、業務内容や更新手続などから判断するため分かり易いと言えます。②の類型は、長期わたる契約更新でなくとも当事者間の言動、認識などから雇用の継続を期待することについて合理性があると認められる場合となっていて判断が難しくなっています。
有期雇用契約といえども、更新不可であることが契約書に明示され、双方がそのことを認識していない限り、期間満了により当然に雇用関係が終了することにはなりません。有期契約だからと安易に雇用関係を締結することは厳に慎まなければなりません。

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