1月号 不合理な待遇差

2020年 1月(第128号)

働き方改革の一環としてパートタイム・有期雇用労働法が改正され、不合理な待遇差が禁止されます。今回は、非正規社員に対する不合理な待遇差を取り上げてみます。

パートタイム・有期雇用労働法とは 

従来も不合理な待遇差に関わる規定がパートタイム労働法、労働契約法で定められていましたが、今回のパートタイム・有期雇用労働法に統合され、同時に重要な改正がなされました。改正の主なポイントは次の2つです。
①不合理な待遇差を解消するための規定の整備:法では不合理な待遇差を設けることを禁止しています。その中心の考えが、「均等待遇」と「均衡待遇」です。均等待遇では、正社員と非正規社員が同じ仕事をしていれば、同じ待遇を求められています。均衡待遇では職務の内容、配置の変更その他の事情の違いに応じた範囲内で待遇が決定されることが求められます。つまり、「均等待遇」と「均衡待遇」を反映させた処遇決定のための規定の整備が必要になります。
②待遇に関する説明義務:不合理でない待遇差は禁止されていません。ただし、求めがあった場合には、待遇差の内容、その理由について客観的かつ具体的に説明することが義務化されました。この説明のためには、①の規定整備が必須です。
均等待遇、均衡待遇が求められるのは、基本給は当然として、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等の全ての待遇に及びます。各種手当の中には退職金も含まれます。
法の施行は今年4月1日、中小企業については1年遅れの令和3年4月1日です。

同一労働同一賃金ガイドライン 

厚生労働省は、法の施行に先立ってどのような待遇差が不合理と認められ、または認められないかに関してガイドラインを示しています。このガイドラインからいくつかの例を示してみます。
①能力又は経験に応じて基本給を支給している会社で、正社員Xが契約社員Yに比べて多くの経験を有するとしてXの基本給を高くしているが、Xの経験は現在の業務に関連性を持たない。 → 不合理となる可能性あり
②契約社員に対して勤続手当を当初の労働契約開始時からの通算ではなく更新時からの期間で支給している。 → 不合理となる可能性あり
③正社員Xは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、不利益を課している。一方、正社員Yや、契約社員Zは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、不利益を課していない。Xに対しては、賞与を支給しているが、YやZに対しては、賞与を支給していない。 → 問題とならない

まとめ 

複数の雇用形態を採っている会社では法の施行までに次の作業を勧めます。
①基本給や賞与の決定方法、各種手当等の支給目的の明確化
②雇用形態間の待遇差の有無の調査
③待遇差があるとき、その理由について客観的かつ具体的な説明の可否の検討
④上記③で説明がつかないときは、その解消策の策定
パートタイム・有期雇用労働法の施行をパートタイム社員や契約社員をより活性化する待遇改善のための良い機会と捉えては如何でしょうか。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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