11月号 有給休暇の取得指定義務

2018年11月(第114号)

働き方改革関連法が2019年4月から順次施行されます。今回は、施行当初から中小企業にも適用される有給休暇を取得させることを義務化する改正・労働基準法について紹介します。

改正内容 

従来の労働基準法では、有給休暇は社員が申請した時季に取得させるのが原則で、会社に対してそれ以上の義務は課せられていません。例えば社長が、「当社のような小さい会社には有給休暇制度なんて無い!」とうその説明をして、社員の誰一人として有給休暇を取得していなかったとしても、それだけでは労働基準法違反に問われることはなく、労働基準監督署の指導もありませんでした。
改正・労働基準法では会社の規模に関わらず、付与日数が10日以上ある社員に対しては、有給休暇を付与した日(基準日と言います)から1年間に、5日以上の有給休暇を付与することが義務化されました。「有給休暇制度なんてない!」と主張することはともかく、実際に社員が5日以上の有給休暇を取得していないと、社長は労働基準法違反に問われることになります。つまり、会社は社員1人ひとりの有給休暇の取得状態を管理して、基準日から一年以内に取得日数が5日に満たない社員に対しては時季を指定して有給休暇を取得させることが課せられます。

会社が準備しなければならないこと 

法の施行が2019年4月に迫っていますので、それまでに次の準備をしなければなりません。
①対象社員の摘出
②取得させる方法の決定
③有給休暇管理簿の整備
①の対象社員は有給休暇の付与日数が10日以上の社員です。下の基準でマークしておきます。
・フルタイム社員:入社6ヶ月以上
・週4日のパートタイマー:3年6ヶ月以上
・週3日のパートタイマー:5年6ヶ月以上
・週2日以下のパートタイマー:非対象
②の取得させる方法とは、①でマークした社員にどのように5日間の有給休暇を確実に取得させるか、その方法を決定することです。5日間の有給休暇を確実に取得している社員は別ですが、そうでない社員に対しては、
1)例えば11ヶ月経過した時点で、取得日数の足りない社員には、要望を聞いて不足している日数分の有給休暇の取得時季を指定する
2)計画的有給休暇制度を導入する
のどちらかの方法を採ることになります。2)の計画的有給休暇制度の導入には労使協定が必要ですが、著者としては管理の容易さからお勧めです。 
③の有給休暇管理簿の整備も義務化されます。これは、有給休暇を付与される社員全員が対象で、社員ごとに基準日、付与日数、取得時季を記載した書類を作成し、期間満了後3年間の保管が必要です。

罰則 

基準日から1年間に5日以上の有給休暇を取得させなかったときは、30万円以下の罰則が規定されています。罰則は課せられないとしても、取得させなかった事実だけで労働基準監督署の指導対象となります。確実な実施が求められます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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