Q: 9月に採用の契約職員の件です。窓口対応、電話応対が主業務ですが、何度もトラブルを起こし、都度指導をしていますが全く改善しません。解雇できるでしょうか。
A: やむを得ないときには解雇もできますが、まずは退職勧奨、できれば期間満了での契約解消が無難です。
有期雇用契約の期間中は自主退職も解雇もできないのが原則です。しかし、やむを得ない事由があれば契約解消できます。不確実性を伴いますが次の手段があります。
(1)退職勧奨
これは対象者が業務に向いていないことを、事実を指摘ながら説明して退職を促すことです。退職勧奨は、退職を勧めるだけですので違法性や不法行為は全くありません。これで対象者が納得して「辞めます」と言ってくれれば一件落着です。
この際に、「辞める」意思決定を後押しするために何らかのインセンティブ、例えば何日分相当の金銭を提示することが良く行われています。
退職勧奨には違法性や不法行為は全くないのですが、声を荒げたりの威圧や度を越えた長時間あるいは多頻度の退職勧奨を無効とした判例があります。
(2)雇止め
対象者は今年の9月に入社したばかりなので、雇止めとすることは現実的です。
労働契約法第19条に雇止めが認められない事由が2項目あります。要約すると、
- 過去に反復して更新され、期間の定めのない労働契約と同視されるとき
- 対象者が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとき
です。
前者は該当しませんので、考慮不要です。後者は、採用時あるいはその後に、「更新されることが当然」と思わせる言動の有無によって判断されます。この様な言動がなければ、ローリスクで雇止めができます。
(3)解雇
リスキーですが不可能ではありません。対象者が解雇に納得できなかったとき、
- 労働局に助言を求める
- 労働局に「あっせん」を求める
- 裁判所に地位確認(解雇無効)の訴えを起こす
が取りえる行動です。
裁判にまで発展することを念頭に、
- トラブル事案とそれに対する指導記録
等を整理し、解雇がやむを得ない措置であったことを証明できる資料を準備しておくことが必要です。
(2023年12月)